「調整仕事」を任される20代社員に必要な視点 GO三浦崇宏が語る「最適解を見つける」重要性
鮮明に記憶に残っているのは、五反田にあるフレンチレストラン『ヌキテパ』さんにご協力いただいて実現した「土のフルコース」っていうPRプロジェクトを手掛けたとき。
これは東日本大震災の原発事故による風評被害の後に、安全性の高い土を販売していたプロトリーフというバイオベンチャー企業から「土が売れなくなってしまった」という相談を受けたことがきっかけで始まったプロジェクト。
その企業の土はあらゆる検査をクリアしていて、研究機関の方からすれば「この土は食べても大丈夫なくらい安全です」っていうお墨付きももらっていたんですよ。でも、何となく汚染のイメージが先行してしまって、その土を買う人が激減していた。

そこで俺が考えたのは、「この土を美味しく食べられないか」っていうこと。食べられるほど安全なら、それを証明しちゃおうと思って。そこからはもう、細かく地道な「調整」の積み重ねです。
新しい食材を面白く、美味しく使ってくれるような都内のレストランをリストアップして片っ端から電話してアポを取って。
「土の料理を飲食店で出せば信頼回復につながるの?」って不安がるクライアントを説得しつつ、メディア向けにこの取り組みの新しさや意義を説明して取材に来てもらって……。
結果的にこの「土のフルコース」はメディアですごく話題になって、クライアントの課題解決にもつながった。ヌキテパさんにも予約が殺到した。ついでに俺も、このPRプロジェクトでカンヌライオンズや日本PR大賞をいただけた。
結果だけ見れば満点だけど、実現までにたくさんの小さな、鮮やかな妥協の積み重ねがあったわけだよ。
クリエーティブな仕事の裏には、必ず調整仕事の積み重ねがある。それなくして話題のプロジェクトも華やかな仕事もない。そういうことを体で学べた経験でした。
「プロセスまで楽しく」なんて甘えじゃない?
今の俺を見ていて、「派手なことばっかりやって、楽しそうだな」って思ってる20代はいっぱいいると思うんだよね。
でも、これだけは言っておきたい。今の俺がやっている仕事も、千個、一万個……数えきれないほどの調整仕事の上に成り立っているっていうことを。
世の中にはビジネス芸人って言われるような、目立って情報発信をしているビジネスパーソンが結構いる。その人たちに対して、華やかだし、楽しそうでいいなぁって思うかもしれない。
だけど、目立ってる奴は、この記事を読んで嫉妬している人たちよりもずっとはるかに苦しんでいるっていうことは頭に入れておいてほしい。
誰もラクして楽しい仕事はできないものだっていうことをね。もっというとラクと楽しいはイコールではないからね。本当に楽しい瞬間はラクの反対側にあることが多い。
だけど、来年こんな風に自由に、思いっきり仕事をしているのは、もしかすると君かもしれない。
今の時代、ちょっと有名になるのなんて一瞬だからさ。「答え合わせはまだ先」ってよく言うんだけど、答えが出るまで頑張り続けるしかないと思うんだよね。
この間のイベントで会った20代の営業マンみたいに、「調整仕事がつらい」って言う奴はいっぱいると思うけど、そもそも、そういう仕事がつまんないのは当たり前じゃないですか?