景気判断を「回復」と据え置いた日本の甘さ 新型肺炎の拡散でイタリア、アメリカにもリスク

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IHSマークイットのエコノミストは、「(PMIの低下は)新型コロナウイルスの流行とも関連があり、それは旅行・観光などさまざまな業種における需要鈍化や輸出減少、サプライチェーンの混乱という形で明白に示されている」と2月21日のリリースで指摘。

今回のPMI悪化は、アメリカ経済に対する新型ウイルスのマイナス影響の大きさを示す最初の指標となる。特にサービス業はGDPに占めるウエートが大きく、拡大11年目に入ったアメリカ経済の牽引役であっただけに、その急激な落ち込みが気になるところだ。

そして第3に、日本政府の政策対応が後手に回るリスクだ。新型コロナ対策では国内外からの批判が強いが、経済財政対策においても同じ轍を踏みかねない。

何より現状の景気認識の甘さが気になる。政府は2月20日に公表した2月の月例経済報告で、新型肺炎の「内外経済に与える影響に十分注意する必要がある」と指摘しつつも、景気全体の判断を「緩やかに回復している」と据え置いた。個人消費の基調判断については引き続き「持ち直している」としており、事態をあまりに楽観視しているように見える。

日本の景気対策が後手に回るおそれも

日本の実質GDP成長率は2019年10~12月期に前期比年率マイナス6.3%と大方の予想を超えて落ち込んだ。特に個人消費は消費税増税や大型台風の影響などが重なり、前期比年率でマイナス11.0%と急激な悪化を示している。

そして、2020年1~3月期に入っても消費マインドは回復しておらず、新型コロナウイルス感染拡大に伴う個人の外出自粛や訪日外国人客の急減が直撃するのは必至。企業の設備投資や輸出への悪影響も避けられない。民間エコノミストの間では、2020年1~3月期の実質GDPも2四半期連続マイナス成長となり、名実ともに景気後退に陥るとの見方が増えており、政府の認識とのズレが広がっている。

検査態勢が遅れる感染症対策と同じように、景気への甘い現状認識を続ければ、的確な対策は打てず、景気はますます悪化することになる。そうしたリスクを市場は今後も織り込んでいくだろう。

「新型ウイルス感染拡大による世界経済の下方リスクに対し、財政出動を含む政策を総動員する」――。サウジアラビアの首都リヤドで2月23日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議はそう共同声明でうたった。だが、各国がどこまで足並みをそろえて実効策を打ち出せるか。刻々と深まる景気不安と政策出動に対する期待感で揺れ動きながら、世界の金融市場は今後も神経質な展開が続きそうだ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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