障害に負けずパラ五輪目指す27歳女性の生き方 河合紫乃「もう一度、スポーツで輝きたい」
「自分の人生にはスポーツが必要だ」
そう確信した河合さんは、対人競技であり、駆け引きがあるという点でバドミントンと共通する車いすフェンシングに挑戦した。
車いすフェンシングは、健常者のフェンシングが「ピスト」という細長い競技エリアを行ったり来たりするのに対し、いすを固定して行う。2人の選手の間の距離が定まっており、突いたり、体をのけぞらせて相手の剣をかわしたりして、上半身の動きだけで競う。至近距離で絶えず突き合うため、正確に剣を操るテクニックはもちろん、高い集中力や強い精神力も必要となる。
約1年で日本代表に選出
河合さんは、「最短で国際舞台に行くには、何が1番自分に向いているか」という観点から、新たに挑戦する競技を決めた。苦しい闘病生活により握力は大幅に落ちていた。車いすの競技は「チェアワーク」といって車いすを操るスキルが求められる。障害者になったばかりの河合さんでは、なかなか短期間での習得は難しい。そこで車いすを固定して戦う競技を選んだ。
「車いすバドミントンをしていたら、前の自分と比べてしまったかもしれません。まったく新しいスポーツに取り組んだからこそ、ゼロから何かにチャレンジしている充実感がありました」
筆者の感想だが、「見るスポーツ」としては、健常者のフェンシングとは異なる魅力があると思う。選手の体の陰になって剣の動きが見えなくなることがないため、駆け引きがよく見える。観客にとっては、わかりやすい競技だ。河合さんの「こんな面白いスポーツがあること、もっと知ってほしい」という言葉に深く納得した。
2018年9月に車いすフェンシングを始め、約1年で日本代表に選出された。2019年5、6月には治療のために入院していたので、実質は競技歴1年足らずの日本代表入りである。国際大会に出場する遠征費や道具を購入する費用が足りなかったことから、クラウドファンディングで約150万円を集めた。