「金余りだから必ず株高」と信じる人が陥るワナ 新型肺炎前からすでに日本企業の収益は悪化

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ただ、短期的に新型肺炎を巡る楽観と悲観で市況が動いても、最終的に市場の方向性を決めるのは、経済や企業収益の実態だ、という考えは変わらない。前回のコラム「『新型肺炎』は株価下落の『本当の要因』ではない」でも述べたので、詳しくはそちらをご参照いただきたいが、「今後の株価を予想する筆者の最も「背骨」になる考え方は、世界の景気や企業収益が低迷しているにもかかわらず、アメリカを中心に株価が高過ぎるため、現在の株価が大きく下がって実態に沿った水準にサヤ寄せすることになるだろう、といったものだ。

そこで指摘していた、アメリカの株価の評価だが、S&P500のPER(株価収益率、企業の収益予想値は米ファクトセット集計、アナリストの12カ月先までの予想平均値)は、先週の平均値で18.9倍と、とうとう近年の最高値であった18.7倍(2018年1月20-24日の週)を上抜けてしまった。これから、全く同じ株価展開になるわけではなかろうが、2018年はその後大きな株価下落が生じている。もしアメリカの株価が調整した場合は、おそらく米ドル安・円高を伴って、日本株の下押し圧力となろう。

日本の景気は、新型肺炎前から不振色を強めている

当コラムでは、前回も過去も、アメリカの動向を中心に述べることが多かったので、今回は日本の景気や企業収益の状況を点検してみよう。

まず日本のマクロ経済については、他の主要国でも同様だが、製造業が大いに打撃を受けている。これは、世界的に環境が不透明なため、諸企業が設備投資を抑制し、日本が得意とする設備機械の売れ行きに悪影響を与えているためだ。日本からの輸出額は、海外の機械需要の減退により、13カ月連続で前年比マイナスを記録しており、改善の兆しが見いだしにくい。

鉱工業生産の水準は、2019年9月までは、じわじわと弱含みながらも底固さも見せていたものの、同10月には前月比で4.5%もの大幅な落ち込みを示した。このデータが発表された時は、多くの識者が「大型台風が襲来して生産活動が乱されただけで、心配はない」と語っていたが、11月はさらに前月比で1.0%落ち込んだ。12月は同1.3%増と持ち直したが、9月の水準と比べて4.2%下と、まだ低迷色が強い。一方で12月の在庫水準は、9月比で2.0%高いところにある。つまり、大きく生産が削減されても、在庫が積み上がっているといった、厳しい状況だ。

こうした製造業の不振を、小売りやサービスなどの非製造業が埋め合わせると期待したいところだ。そうした非製造業の業況は、雇用情勢が堅調で賃金が上がる、という状況ならば、家計の個人消費増で支えられると見込まれる。しかしその雇用情勢に、大きく暗雲が立ち込めてきている。

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