「金余りだから必ず株高」と信じる人が陥るワナ

新型肺炎前からすでに日本企業の収益は悪化

たとえば先々週末(2月7日)に公表された12月の毎月勤労統計調査によれば、同月の現金給与総額は前年比横ばいだった。消費増税の悪影響を考えると、給与横ばいでは支出を削らざるを得ない。その現金給与総額の内訳を見ると、所定内給与が前年比0.4%増だったものの、ボーナスなどの特別給与が0.2%減、さらに残業代や休日出勤手当などの所定外給与が2.6%減であった。

所定外給与の減少は、所定外労働時間の減少と整合性がある動きだ。残業代などが減っているのは、景気が悪化し企業の仕事量が減っていることを示しているのかもしれないし、働き方改革によるものかもしれない。理由がどうあれ、残業が減れば、残業代に頼る勤務者の手取りが減り、消費が減退するという展開になっているのだろう。

実際、やはり先々週末に発表された12月の家計調査をみると、2人以上世帯の消費支出は、統計改定の影響や物価の動きを除いたベースで前年比4.8%減と、3カ月連続のマイナスとなっている。企業の採用も減退気味だ。企業の新規求人数は、12月は前年比4.6%減と、7カ月連続のマイナスを記録している。

こうした落ち込みは、2001~2002年(ITバブルの崩壊)や2007~2009年(米住宅バブルの崩壊からリーマンショック後)に続くものだ。まだ求人数の減少率は、そうした過去の景気後退期ほどひどくはないが、日本の雇用が後退色を強めている可能性が高い。なお、述べてきたような、日本の経済指標の不振を示すデータは、全て新型肺炎が騒がれる前のものであることに注目すべきだ。

国内企業の3期連続減益の可能性が高まっている

日本では、昨年12月までの企業決算の発表がほぼ一巡した。個別に決算内容が不振であった企業の株価が、直後に下落した展開が多いが、それに対して一部報道では、「世界的に金余りの状況であるにもかかわらず、収益が不振な銘柄の株価が下落したのは驚きだ」との声が伝えられている。収益がどんなに悪くても金余りなら株価は上がる、と考えている人がいることの方が驚きだが、「金余りによる株高説」を信じ込んでいることの危険さが浮き彫りになったとも言える。

日本経済新聞社による14日(金)時点の集計では、2019年4~12月の純利益は製造業、非製造業とも減益で、企業側の2020年3月期通期の見通しも9%減益の見通しだとされている。今回の決算発表時に収益見通しを修正した企業のうち、63%が下方修正とのことだ。

米ファクトセットが集計した、アナリスト予想の平均値では、東証1部全企業の先行き12カ月間(2020年3月~2021年2月)の1株当たり利益の前年比は、7.3%減益が見込まれている。日本企業の純利益は、2019年3月期、2020年3月期と、2期連続の減益が確実視されているが、3期連続減益の可能性が高まっているのではないだろうか。

こうした日本経済や企業収益の不振は、当然海外投資家も関知するところだ。アメリカの株価が短期的に上振れする局面があれば、それだけを手掛かりとした日本の株価指数先物への投機筋の買いが入ることはあろうが、日本株現物に対する海外長期投資家の姿勢は、次第に後ろ向きになってくるだろう。

そうした流れの中で、今週の日経平均株価は、2万2900~2万3700円と、下落方向を見込む。ただしこの見通しは株価の基調を示したものであって、前述のように、新型肺炎に対する思惑で、株価が短期的に大きく上にも下にも振れるリスクが残る。短期的に儲けようと欲張ったポジションをとるのではなく、大きく株価が下落するまで、じっと忍耐強く現物の買いタイミングを待つ姿勢を勧めたい。信用売り、株価指数先物売りなどは、想定外の株価上振れが長く続いた際に耐えることが難しいので、推奨しない。ただ、損失が出ても自分自身以外の誰のせいにもしないのであれば、どういう投資行動をとろうと、全く読者の自由だ。

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