「がん教育」が日本の子どもに与える重要な意味 授業を通じてがんを予習することが決まった
そのことを思えば、子どもたちが中学生、高校生に差しかかる頃に「がん年齢」を迎える親御さんたちは特にがんについてより深刻に考えなければなりません。
がん年齢とは、がんの発症が急激に増える40歳以上を指しますが、20代後半で子を授かった親御さんは皆この世代にあたります。ところが子どもたちを守るべき立場の親御さんが、予備知識がないまま、がんに侵されたらどうでしょう。パニックになり、その動揺は子どもたちの心や生活を必要以上に激しく揺さぶることになります。
もし「がんはすぐ死ぬ不治の病」などということは過去の医学常識だと知っていればそのショックを和らげ、前向きに治療できるはずです。
2つ目は、がんについて科学的に証明された事柄が増えてきて、その大まかな輪郭が見えてきて子どもたちに正しい事柄が伝えられるようになったからだと思います。
例えば、がんの原因は、「生活習慣」「細菌やウイルスの感染」「持って生まれた遺伝的要因」などが複数重なったことで起こること、たった1つのがん細胞が一般的ながん検診で発見できる1センチ程度の大きさの塊になるまでに10~20年かかること、それ以降は大きくなる速度が増してがんの塊が2センチ程度になるのに1~2年しかかからないこと、その後は加速度的に大きくなり自覚症状があらわれてくること、中には急激に大きくなる場合もあること……などです。
子どもたちにこうした事柄を教える目的は、科学的に間違いではないだろうと証明された方法を実践し、がんリスクを下げてもらうためだと思います。
低いがん検診の受診率
子どもたちが早期に「がん」について学ぶことで、自身のがんリスクを下げる効果が期待できます。それには2つのことを実践しなければなりません。
1つは、がんになりにくい生活習慣を心がけることです。たばこを吸わない、過度の飲酒をしない、バランスのよい食事をするといったことがこれに当たります。
もう1つは、がん検診の有用性を学び一定の年齢になったらがん検診を受けてがんリスクをさらに抑える必要があります。
現在の医療において総じてがんの60%は治る時代となりました。皆さんは「早期発見早期治療」という言葉を聞いたことがあると思います。なぜ、がんを早く見つけて治療することが推奨されるのでしょうか?
その理由はいろいろありますが、その成果はがんの進行度別にみた5年生存率をみれば明らかです。がんは進行すればするほど治りにくくなる病気ですが、がんの種類によって差はあるものの、早期に治療すれば約9割は治る病気です。そのためには早期発見が重要なのです。
日本では胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんなどのがん検診を行っており、国はこの5つのがん検診の効果を認めて推奨しています。
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