地主がレオパレスを提訴 トラブル多発のアパート経営制度

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 ただ、同社が配布する営業用パンフレットには固定期間についての説明はなく、ホームページにもその記載はない。不動産トラブルに詳しいある弁護士は「パンフレットなどを読んでいると、30年もの間、事業が保証されるようにもとれる。一種の”だまし”ではないか」と語る。丁寧な事前説明がなされていたのか、気になるところだ。
 
「一括借り上げシステム」は企業にとって実に”うまい”仕組みだ。オーナーの不安を取り除くことで、時には1億円超にもなる高額なアパート建設を促し、建設請負と賃貸保証の両面で収入を確保できる。一定期間は家賃相場が下がった際のリスクを負うものの、レオパレスや大東建託は契約後3カ月間の保証免責期間も同時に設けており、この期間は家賃収入が全額、企業の懐に入る。「保証期間中に家賃相場が5%程度下がったとしても、免責期間の収入でカバーできる」(賃貸大手関係者)とも、業界ではささやかれる。
 
 そうした一方で近年は次々とトラブルが表面化している。一定期間が経つと賃料が見直されるため、築年数を重ねるにつれ保証賃料が引き下げられるケースがあり、保証料として家賃の10%程度を差し引かれることもある。国民生活センターには毎年、「契約を急がされた」(60代男性)、「解約を申し出たが、着手金が戻ってこない」(50代女性)など、複数の相談が寄せられている。
 
 企業の営業姿勢に疑問を呈する関係者は少なくない。不動産コンサルタント業さくら事務所の長嶋修会長は「企業は拙速な営業を行っているのではないか。アパート建設を、相続税など節税対策という短期的な視点でしか見ていない。アパート運営・管理という長期的な視点が軽視されている」と指摘する。
 
 アパート・マンション経営に関する著書がある不動産コンサルタントの浦田健氏は、住宅の空室率の上昇を懸念する。直近では改正建築基準法の影響でマイナスに転じたとはいえ、この数年は新設住宅着工数は増加傾向。これに比例して空室率は悪化している。総務省の統計を基に試算した住宅全体における直近の空室率は13%。浦田氏は「2015年には20%になるだろう」と分析する。となれば、将来的に家賃相場が下がる可能性は高い。逆にローン金利は上がることも考えられる。じわりと圧力を増す経営負担に、保証期間中のアパートオーナーは気づかない。だが、保証期間が終了した途端に、赤字経営に苦しめられる可能性がある。「ほとんどのオーナーは、ゆでガエル状態」(浦田氏)というわけだ。
 
 こうした背景があるにもかかわらず、次々と地主に甘い声でささやいては、アパートを建てさせることばかりに血道を上げている企業があるとすれば、いかがなものか。社会的大問題になる前に、業界全体が制度を見直す必要がありはしないか。
(週刊東洋経済:梅咲恵司 撮影:今井康一)

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