地主がレオパレスを提訴 トラブル多発のアパート経営制度
賃貸アパートの「一括借り上げシステム」は企業がオーナーに対し一定期間の家賃を保証する画期的仕組み。が、住宅の空室率が上がるにつれ問題点が顕在化しつつある。
(週刊東洋経済3月1日号)
「催眠商法まがいの悪質な営業手法だ」--。富山県在住の木村信二さん(60、仮名)は怒りをあらわにする。
昨年8月。木村さんはアパート賃貸大手のレオパレス21から、アパート経営制度「30年一括借り上げシステム」の提案とともに、賃貸アパートの建設を勧められた。そこで石川県石川郡にあった旧宅を取り壊し、アパート(鉄骨3階建て、18戸)を建てることを決意。レオパレスと「工事請負契約」を締結し、契約着手金300万円を支払った。
ところが旧宅の解体作業が終わり、アパートが着工される直前になって、木村さんはこの制度の”盲点”に気づき、慌てて解約を申し出た。
各地でトラブル発生、免責期間で儲ける企業
「一括借り上げシステム」は企業がオーナーに対し、空室が出ても一定期間の家賃を保証する制度だ。レオパレスや大東建託など賃貸大手だけでなく、ハウスメーカーもこぞって導入。賃貸アパートは、このシステムの普及とともに市場が拡大してきたといっても過言ではない。
レオパレスの制度は「保証賃料の固定期間10年、それ以降は2年ごとに改定」となっている。が、冒頭の木村さんは「固定期間が10年間しかないことを事前に知らされていなかった」と主張する。つまりはこれが”盲点”だった。「レオパレスの営業員は30年契約を強調し、(アパート建設のために借りる)銀行ローンの返済分を差し引いても毎月およそ30万円儲かるとの話だった」と木村さんは話す。10年目以降に保証賃料が改定されれば、収入がローン返済額を下回り赤字に陥ることも考えられる。それに気づき契約解除を申し出たところ、すでに支払っていた着手金が戻ってこないばかりか、「消極的損害の一部」との名目で約1000万円の損害金まで同社から請求されてしまった。結局、木村さんは同年12月、金沢地裁に同社を提訴した。
これに対し、レオパレスは通常の営業活動で次のことを徹底しているとする。「オーナーに渡す『賃貸管理業務仕様書』には賃貸契約書の見本がついており、そこに固定期間10年を明記している。事業計画書(アパートの収支計画)も、10年間のシミュレーションを提示している。個別訪問の際には、保証期間について(口頭で)説明する」(同社)。