イタリア「高速列車脱線」早期回復のカラクリ 迂回ルートを駆使して事故当日に運転を再開

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ところで、今回の事故で1つ注目したい点がある。前述の「通常の営業運転」とは、高速新線を通る平常ダイヤとしてという意味で、フレッチャロッサや同じ区間を走行するイタロなどの高速列車は、事故発生の数時間後には運行を再開していた。

運休となったのは、事故直後に発車予定だった数本のみである。日本で言えば東海道新幹線に匹敵する大動脈とはいえ、驚異的に早い運行再開である。

ミラノ―ボローニャ間の在来線。ローカル列車は運転区間短縮や時刻変更を行い、フレッチャロッサなど高速列車を優先的に運行させるように努めている(筆者撮影)

イタリアを含むヨーロッパの高速新線は、日本の新幹線と在来線の関係とは異なり、線路幅や車体の規格がどちらも同じである。このため、途中の数カ所に在来線と高速新線とをつなぐインターチェンジのような接続線(出入り口)があり、事故や災害時に柔軟な対応が可能となっている。

今回の事故では、事故現場の手前に位置するピアチェンツァまで高速新線を通常どおり運行し、ここで在来線への接続線を通じて迂回させることで、運休を最小限に抑えた。

迂回により、ミラノ―ボローニャ間の所要時間は最大で1時間程度延びているほか、高速列車を優先するため、在来線のローカル列車に時刻や運行区間変更などの影響が出ているが、事故当日の午後以降、大きな問題もなく運行されている。

代替ルートの構築は重要だ

日本の新幹線は、線路幅や車体の大きさ(建築限界)が在来線とは異なるため、このようなことはできない。万が一事故や災害が発生した場合、基本的には乗り換えが必要となる。

列車事故による乗客死亡ゼロを継続中の新幹線だが、災害によって長期不通となったケースはあった。近い将来には東海大地震の発生も危惧される。また、東海道新幹線の線路も老朽化が進行し、いずれは列車の運行を一時停止して大規模な改修工事が必要となる可能性もある。

1つの例として、北陸新幹線の新大阪延伸の際、線路が山陽新幹線と接続されれば、東海道新幹線の代替ルートとして東京まで直通運転させることも可能となる。事故はともかく、災害が多く発生する日本も、将来を見据えた第2・第3の代替案を検討する必要はあるのではないだろうか。

日本と欧州の鉄道システムの違いもあり同列には語れないが、今回のイタリアの事故と、その後の迅速で柔軟な対応を目の当たりにして、そう思わずにはいられなかった。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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