イタリア「高速列車脱線」早期回復のカラクリ 迂回ルートを駆使して事故当日に運転を再開

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当日は未明に保線作業が行われていたことがわかっており、事故を起こした列車が当日の始発列車だったことから、保線作業に何らかの問題があった可能性があったと当初から指摘されていた。

事故現場となったリヴラーガ待避線(PM Livraga)を通過する高速列車フレッチャロッサ(事故列車とは異なる)。事故列車は写真奥から手前へ走っており、写真中央付近の待避線の終端部分手前で停止した(筆者撮影)

ミラノ近郊では、2年前にもピオルテッロ(Pioltello)付近で、3人の死者を出した脱線事故が発生している。

この事故もいまだ事故原因は不明ながら、保線作業の不備が原因として疑われており、この地域の保線体制そのものに問題があるのではないかと現地メディアは指摘している。

信号や司令室の表示はどうだった?

待避線のポイントは、当初から事故原因として疑われていた。最初の段階ではさまざまな憶測が飛び交っていたが、現場中継のテレビ映像にも瞬間的ながらポイントが映っており、その向きが待避線側に向いていることがはっきりと分かった。このため、ポイントの向きが原因で脱線へと至ったのか、それとも事故の衝撃でポイントが切り替わったのか、という部分が焦点となっていた。

事故を起こしたのと同型車両のETR400型。フレッチャロッサ1000(ミッレ)という愛称で親しまれる(筆者撮影)

だが、もしもポイントが待避線側に切り替わったままだったことが原因であれば、運輸司令室の表示や、信号がポイントに連動して減速や停止を指示していなかったのか、といった点は非常に気になるところだ。この点については、さらに警察が調査を進めていくことになるだろう。

車両側の問題点は、今のところ指摘されていない。乗客のコメントでは、脱線へ至るまでに兆候は一切なく、走行中に突然の衝撃とともに脱線したとのことで、車両自体に問題があった可能性はほぼない。

イタリア鉄道は、現場の復旧には数日を要し、通常の営業運転は現場検証と復旧工事がすべて完了するまで、まだしばらくかかる見通しと発表している。

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