1億円超の「ハイパーカー」が増えている理由 トヨタも参入する超高性能車のニーズとは

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トヨタがハイパーカーに進出する理由のひとつは、世界最高峰のレースのレギュレーションの見直しだ。日本でも有名な「ル・マン24時間耐久レース」でトヨタは2018年と2019年に総合優勝し、今年は3連覇を目指している。

そのレースでのトップ争いが、今後はハイパーカーをベースにレース仕様へ仕立てたモデルへと移行する予定となっているのだ。トヨタのハイパーカーは、そこへ参戦しようというのである。

しかし、それ以上に大きな理由はトヨタにはある。「次の100年も自動車産業を面白いものとする」という壮大なテーマだ。

東京オートサロン2020のプレスカンファレンスに登壇した友山茂樹副社長(写真:トヨタ自動車)

友山茂樹副社長は、2018年の東京オートサロンでこうスピーチしている。

「『自分の意志で自由に移動したい、どこまでも遠くに、誰よりも早く、美しく移動したい』という人間の欲求は、不変的なものであり、それを実現してくれるクルマに対する人々の感情は、豊かで、心ときめくものがあります。次の100年も、クルマを徹底的に面白くするというTOYOTA GAZOO Racingの挑戦は、まだ始まったばかりですが、お客様の笑顔のために、自動車産業の未来のために、心ときめくクルマづくりに拘(こだわ)り続けていきたいと思います」

トヨタのチャレンジを見守りたい

究極のエコカーやカーシェアリングなど、トヨタの描くクルマの将来像は従来のクルマ好きが楽しめるような未来とは言いがたい。しかし、トヨタ自身がそれをしっかり理解しているからこそ、クルマが白物家電化する一方で、クルマ好きをときめかせるようなモノづくりも同時に進めていこうとしているのだ。

良品廉価のモノづくりを得意としてきたトヨタには、高額なスーパーカーを得意とする欧州メーカーとは異なり、1億円を超えるような市販車作りのノウハウはない。それはすなわち、ハイパーカーの開発と市販化が驚くほどハードルの高いプロジェクトだということを意味している。

しかし、クルマ好きの1人として、そして日本人として、日本を代表するメーカーのそんな無謀とも思えるチャレンジの成功を、大きな期待とともに見守りたい。

工藤 貴宏 自動車ライター

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くどう たかひろ / Takahiro Kudo

1976年長野県生まれ。大学在学中の自動車雑誌編集部アルバイトを経て、1998年に月刊新車誌の編集部員へ。その後、編集プロダクションや電機メーカー勤務を経て、2005年からフリーランスの自動車ライターとして独立。新車紹介を中心に使い勝手やバイヤーズガイド、国内外のモーターショー取材など広く雑誌やWEBに寄稿する。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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