市販薬の「大量服用」に依存する人の切実な実態

販売規制や啓蒙教育だけでは防止できない

身近な医療にも問題が隠れている(デザイン:杉山 未記、イラスト:北原 明日香)

医師から言われるがままに飲んでいた薬、病気を治すためだと思っていた治療や検査……。それらが実は健康をむしばんでいるかもしれない。

2月10日発売の『週刊東洋経済』は「信じてはいけない クスリ・医療」を特集。がん患者につけこむ科学的根拠のない免疫療法、量産される無駄な入院など、身近な医療の裏側に迫っている。

「大量に飲むとトリップできる」「悩みが吹き飛んで多幸感が得られる」――。

これは大麻や覚醒剤など違法薬物の話ではない。ドラッグストアで買える市販のせき止め薬や風邪薬のことだ。商品名をインターネットで検索すれば、こんな情報があふれている。

今、10代の間で、身近な市販薬の乱用が増えている。厚生労働省の調査によると、市販薬の乱用は全薬物乱用者のうちの5.2%(2016年)から5.9%(2018年)と微増にとどまる。しかし、10代の薬物乱用の推移を見ると、2014年にゼロだった市販薬乱用は、2018年には約4割と最も多くなっている。

市販薬の乱用者は7割が女性

2014年に最も多かった危険ドラッグの乱用者は男性中心だ。対して、市販薬は女性が7割を超える。使用している層が異なるため、危険ドラッグが規制された結果、市販薬に流れたという単純な構図ではない。若年層、しかも女性に多いのが市販薬乱用の特徴だ。

『週刊東洋経済』2月10日発売号の特集は「信じてはいけない クスリ・医療」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

薬物による依存症の回復を支援するNPO法人で働く大木由美子さん(41歳、仮名)も、10代の頃から市販薬乱用に苦しんだ1人だ。「どこにでも売っているし、危ない薬だとは思っていなかった」と、当時をそう振り返る。きっかけは、18歳のとき好意を寄せていた男性から勧められたことだった。嫌われたくないという思いから断れず、せき止め薬の「ブロン錠」を一度に20錠飲んだ。

「しばらくすると、悩んでいたことが頭から消え、『生きていてよかった』と幸せな気持ちになりました。魔法の薬のように感じたんです。それからドラックストアを何軒も回り、薬を買い集めました。せき止め薬と同じ成分が入った薬も試したり……。毎日のように店に通い、いろいろな薬を飲んでいましたね」

気づけば、薬はおびただしい量になっていった。1瓶84錠のせき止め薬を1日数回、その間にも鎮痛薬を常に飲んでいる状態だったという。大木さんは22歳のとき、精神科病院に入院。リハビリ施設で12年間の生活し、乱用を克服した。

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