アイオワ民主党予備選の勝者はトランプ大統領 票集計作業の失態で選挙結果の影響力は低下

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民主党アイオワ党員集会ではブティジェッジ候補がリードした(写真:REUTERS/Brendan McDermid)

民主党の票集計作業の失態は選挙戦の行方をも左右しかねない。特にブティジェッジ候補やサンダース候補などは、予定どおり選挙当日3日に開票結果が公表されていれば、アイオワ州で上位に付けたことが驚きとともに大きく報じられ、その勢いに乗って翌週11日実施のニューハンプシャー州予備選でのさらなる躍進を狙うことができたかもしれない。だが、翌4日の報道はもっぱら票集計作業の失態に集中した。

さらには開票結果の一部が公開された数時間後の4日夜には、話題はトランプ大統領の一般教書演説にシフト。5日には上院で行われている弾劾裁判でトランプ大統領の無罪判決が下され、7日には民主党テレビ討論会も予定されている。もはやアイオワ党員集会の選挙結果は次々とビッグニュースが続く「ニュースマゲドン」に埋もれ消えてしまう。

アメリカの予備選の特徴はすべての州が同日に選挙を実施せず、順番に実施することだ。この仕組みでは「ひとつの予備選での勝利は、次に続く予備選で勝利する可能性を大幅に高める」とブルッキングス研究所上席研究員エレイン・ケイマーク氏は著書『予備選の政治』で語っている。2008年の選挙では予備選前までの世論調査で、ヒラリー・クリントン候補が大幅なリードを長期に渡って保持していたにも関わらず、アイオワ州で勝利したバラク・オバマ候補が一気に1位に躍り出て指名獲得に至った。

バイデンの今後の戦略と勝算

だが今回は、選挙当日夜に開票結果が発表されない中で、ほぼすべての民主党候補が勝利宣言を行った。全部の候補がアイオワの結果は期待以上でありその勢いで次のニューハンプシャー州予備選に挑む、という同じストーリーを語り、選挙結果のインパクトは薄まってしまった。

したがって、票集計の失態はバイデン候補には救いの手になったとも言えよう。同集会はバイデン候補が本当に「勝てる候補」なのかが、試されるはずであった。だが、初戦でのブティジェッジ、サンダース両候補の勝利も、バイデン候補の苦戦もニュースマゲドンに埋もれた。バイデン陣営は同候補の苦戦の理由について説明を求められずに済んだ。

民主党の誓約代議員数全体のうちアイオワ州のそれは41人とわずか1%にすぎない。また白人の多い同州はマイノリティが拡大するアメリカの人口動態に比べて大きく偏っている。国勢調査によるとアイオワ州の非ヒスパニック系白人の割合は88%と全国平均の63%を大幅に上回る。

またニューヨークタイムズ・シエナ大学の世論調査によると全国平均と比較して、アイオワ州では若年層が多く投票所に足を運んでいる。そのため、党員集会には、穏健派よりも熱狂的なリベラル派のほうが多く集まる。非白人、高齢者、穏健派に強いバイデンにとっては、不利な戦いでもあった。

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