アイオワ民主党予備選の勝者はトランプ大統領 票集計作業の失態で選挙結果の影響力は低下

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民主党予備選は6月6日まで各州・自治領で実施され、7月13~16日に開催される民主党全国大会で党の公認候補が正式に指名される。同党大会に出席する誓約代議員の合計3979人のうち、過半数の1991人を獲得した候補が指名争いを制する。仮に候補のすべてが1991人に満たない場合、2回目の投票が行われ、771人のスーパー代議員が参加し計4750人の代議員の過半数となる2376人を獲得した候補が指名されることとなる。

ブティジェッジ候補は自らの支持基盤に近い人口動態のアイオワ、ニューハンプシャーの両州予備選で健闘するも、その後はマイノリティが多い州での選挙戦で壁にぶち当たると予想され、指名獲得は容易ではない。一方、サンダース候補は豊富な資金を保有し長期戦にも持ち堪えられる。

エマーソン大学世論調査(2020年1月)によると、「サンダースが指名されなくても民主党指名候補を支持する」と答えたのは、サンダース支持者のうち53%に過ぎない。約9割が「誰であっても民主党候補を支持する」と答えたバイデン支持者やウォーレン支持者と比べ、大幅に低い数値だ。

つまり、7月の民主党大会で仮にバイデンなどサンダースではない候補が民主党公認候補に指名された場合、サンダース支持者の半数近くが票を投じないリスクがある。一方、仮にサンダース候補が民主党公認候補に選ばれた場合、無党派層に加えて民主党穏健派などがサンダース候補に票を投じない可能性が出てくる。

1人の候補で団結できるのか

11月の大統領選でトランプ大統領は2016年と同じ戦略で民主党候補と自らのどちらかの「選択」を有権者に迫る構図の選挙を望んでいる。その一環でトランプ氏は本選でバイデン候補と対決した場合、同候補にエスタブリッシュメントであるとのレッテルを貼る。なお、トランプ氏はサンダース候補については、すでに見られるように、社会主義者とのレッテルを貼っている。

一方、民主党は大統領選を2018年と同じくトランプ大統領の信任投票とすることができればホワイトハウス奪還に一歩近づくであろう。民主党支持者の最大の関心は「トランプ大統領に本選で勝利できること」であり、そのような候補を民主党大会で指名することだ。

初戦で感情を優先したアイオワ州民主党支持者だが、今後、数カ月におよぶ予備選で他の州の民主党支持者もアイオワに追随して感情を優先するのか、あるいは合理的な選択肢に切り替えるか、目が離せない。アイオワ党員集会では亀裂も垣間見えたが、本選に向けて民主党が早期に1人の候補で団結できるかどうかが注目される。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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