アイオワ民主党予備選の勝者はトランプ大統領 票集計作業の失態で選挙結果の影響力は低下

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バイデンはアイオワ州そして同じく非ヒスパニック系白人が多いニューハンプシャー州予備選を低空飛行で切り抜けた後、穏健派やマイノリティなどの有権者が増える2月下旬のネバダ州とサウスカロライナ州、そして3月3日のスーパーチューズデーでの挽回を狙っている。

特にサウスカロライナで黒人票を多く獲得して圧勝できれば、バイデン復活はあり得る。バイデン陣営は、苦戦が想定されたアイオワ党員集会実施前から、同州の重要性を抑える発言をし始めていた。

しかし、逆のことも起こりうる。初戦アイオワ州に続きニューハンプシャー州予備選でも苦戦すれば、有権者から「勝てる候補」との信頼を急速に失いかねない。今後、バイデン候補がスーパーチューズデーまで選挙戦から脱落せずに残ったとしても、その後活動を続ける資金は底をついて離脱せざるをえないリスクは大いにある。

スーパーチューズデーでバイデン候補が勢いを失うころ、豊富な資金と共に参戦するのがニューヨーク前市長のマイケル・ブルームバーグ候補だ。そのころにバイデン氏が失速していれば、ブルームバーグ氏が民主党穏健派にとって救世主と映り、その支持が同候補に集約される可能性もある。

「トランプ退陣」よりも感情で候補者を選んだ

今回、アイオワ州の民主党支持者は、頭ではなく心に任せて民主党大統領候補を選択したといえよう。

ロイター通信・IPSOS社世論調査(2020年1月)によると、2020年大統領選で民主党支持者が最も重視する民主党候補の特徴は、「トランプ大統領に本選で勝利できること」(42%)で、その次の「医療政策で好ましい政策を保持していること」(11%)を大幅に上回っている。

本選でトランプ大統領に勝利できると最も有力視されている民主党候補はバイデン氏だ。ワシントンポスト紙・ABCニュースが1月20~23日に実施した世論調査では、バイデン対トランプは50%対46%、サンダース対トランプは49%対47%、ブルームバーグ対トランプは49%対46%、ウォーレン対トランプは48%対48%、ブティジェッジ対トランプが45%対48%という結果であり、本選ではバイデンが対トランプで4ポイント差と最も勝率が高いと見られている。

この2点からも、11月の大統領選本選で勝利しやすいと一般的に考えられ、合理的と思われる候補はバイデンだ。だが、アイオワ州民主党支持者は自らの感情に任せて、ブティジェッジ候補やサンダース候補を選択した。

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