権益に固執するメディア、記者クラブが日本の情報発信を阻害する-上杉隆


 このように世界中のメディアを敵に回しても、頑として記者クラブが会見の開放を拒んできた根拠は主に次の三つ。スペース、セキュリティ、主催権の問題だ。いずれも簡単に論駁できるが、誰もやらないのでここで明確にしておこう。

まずスペースに関してだが、過去6年間、民主党が会見を開いていた党本部の会場は、現在の首相官邸の記者会見場の3分の2くらいの広さしかない。しかも、それでも足りないのであれば大広間で開けばよい。さらに言えば、現在の内閣記者会には、NHKの18人を筆頭に一社で何人もの記者が登録している。所詮、質問するのは1人か2人なのだから、一社の割り当てを減らして、他のメディアに余りのパスを分ければいいだけだ。これでスペースの問題は単なる詭弁だとわかる。

セキュリティの問題については、今の日本政府の会見こそ、世界中で最も危険な記者会見だと見られていることを説明すれば十分だろう。

日本以外の国では、記者会見の主催権は権力側にある。よって、すべては個人として登録・申し込みを行う。その結果、本当にジャーナリストか、国外追放の経歴、重犯罪歴、テロリストに協力した痕跡などを調べたうえで、取材活動の実績が認められれば、個人にパスが発行される。これが国際標準だ。

ところが日本の記者クラブ制度だけは、メディアに所属しているというだけで、個人のセキュリティチェックを事実上することなく、パスが発行されている。つまり民間企業にすぎない報道機関に危機管理を丸投げしているのだ。不埒(ふらち)な人間がメディアに入り、官邸に忍び込んだら簡単にテロを起こせるのが今の日本政府のセキュリティ体制なのだ。

三つ目の主催権の問題はより深刻だ。日本の記者会見は、国有財産である官公庁の建物の中で、民間企業の組織体である任意の団体が決定権を持って開かれている。当然、そこには法的根拠がない。法的にもっと言えば、民間への公費支出ということで憲法違反の疑義さえある。

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