「新型肺炎」の深刻な感染拡大がもたらす悪夢

感染予防に努めても世界的影響は計り知れない

日本国内で感染した女性ガイドは、体調の不良を訴えて受診した東京の医療施設から自宅のある大阪まで、新幹線と地下鉄を利用したことが確認されている。

中国国内では2003年当時、感染拡大を封じ込めるため、駅でも体温チェックをされていた(筆者撮影)

中国でも、日本の新幹線とそっくりな高速鉄道が敷かれているが、SARSでは走行中に車掌がまわって乗客の体温をチェックし、駅の構外に出る前に検問が置かれ、完全防護服の職員が乗客1人ひとりの体温を確認していた。

発熱が確認されると、別の場所につれて行かれる。日本でも感染の拡大がともなえば、主要都市のターミナル駅でも規制が必要になるかもしれない。

また、高速道路上でも都市の境界で検問が敷かれ、運転手や同乗者の体温チェックが行われていた。日本では料金所でその役割が果たされるはずだ。

「濃厚接触」を避けるべくSARS当時とられた対策

SARSの中国から国外への感染拡大は、香港のホテルの同宿者から広まっていったことは以前にも書いたが、感染拡大後の台湾や香港のホテルでは、入り口にスタッフが立ち、来客ひとりひとりに消毒液での手洗いを促したあと、各自の体温をチェックしていた。

SARS流行当時、香港のホテルでは1人ひとりの体温チェックをしていた(2003年、筆者撮影)

それで異常がなければ、胸元に小さなシールを貼る。チェック済みというより〝この客は安全〟という保証にもなる。それもあって、シールの色は毎日変えられていた。

北京の地下鉄、台湾の国内線空港はガラガラ。まばらな客は全員がマスクをしていた。私がいまでも印象に残っているのは、北京の地下鉄車内で少ない人目を気にしながらも、マスク越しに接吻をしていた若い男女の姿だった。「濃厚接触」はさまざまなものを規制する。

繁華街からはヒトが消える。映画館などのヒトの集まる娯楽施設は封鎖。北京でデパートが建ち並ぶ有名な繁華街「王府井」はまるでゴーストタウンのようになり、小さな店が軒を連ねる飲食店街の一角は、ほとんどの店が閉まっていた。開けても客は来ないし、客が来たところで感染するのも困りものだ。

北京の飲食店街はまるでゴーストタウンのようになり人影もほとんどなくなった(2003年、筆者撮影)

日本の東京に置き換えるのなら、休日の新宿や銀座からヒトが消えるのと一緒だ。それは経済にも深刻な影響を与えることは言うまでもない。

その一方で、新しい仕事も生まれた。ホテルに入り、エレベーターホールに向かうと、ネクタイ姿でマスクとシリコン手袋をした男性がドアの脇に立っていた。

こちらの姿を確認すると、すかさずエレベーターボタンを押す。不特定多数の人間が触れるボタンを専門に押す人材だった。最も、エレベーター内で接触感染はする可能性は残るのだが。

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