学校では教わらなかった大人の世界の民主主義

多数決を機能させる「多様な意見の仕分け方」

大人の世界の民主主義では、学校で習ったように多数決は機能していない(写真:Ushico/Pixta)

世の中には多様な意見がある。そしてそうした意見はひとつひとつ尊いものである……。そりゃそうだ。そういうことは十分にわかっていても、やはり思う――この人たちは、どうしてそういう意見を言うのだろうか、と。

ここでは、実際の政策が形成され、公的な意思決定がなされている、リアルな社会での民主主義はどのようにワークしているのかを考えながら、多様な意見を仕分けるすべの話をしておきたいと思う。

大人の世界の民主主義

そう遠くない将来に選挙があるとする。あなたは政治家だとすると、どんな政策を掲げるだろうか。選挙で勝たなければ政治家ではいられない。さて、あなたは、選挙の日の投票者たちの行動をどう読むか。

投票者は、当然の話なのだが、投票するためだけに生きているわけではない。言うまでもなく、投票者たちは毎日の生活の中でやることがあり、概してかなり忙しい。だから、1日の24時間を自由に使ってもいいという自由人であっても、公共政策の勉強に時間を費やす人がどれほどいるのかよくわからない。

たとえば、医療政策をはじめ、年金、財政、外交の勉強に時間を使うのであれば、投票者ひとりひとりにとって、そんなことよりも意味のある時間の使い方を挙げるのはさほど難しくないだろう。というよりも、仮に、公共政策の勉強に日々時間を費やすことがあったとしても、その勉強の成果を発揮できるのは、実のところ、公共政策のあり方を投票で決める選挙の日くらいしかない。

そしてこの選挙において、ひとりひとりの票は、全投票者数分の1のウェイトしかもっておらず、実際のところ、選挙当日に雨が降っているから家でテレビを観ておこうと思っても、自分1人の選挙結果への影響は大したものではないはず。ゆえに、投票者がマジメに公共政策を日々勉強するとはどうも考えにくい。

いや、投票者は公共政策に関して勉強することはほとんどないのではないだろうかというのが、経済学の一分野である公共選択論(Public choice)における「投票者の合理的無知(Rational Ignorance)」という考え方である。

投票者が合理的に行動をして、1日24時間という時間を自分にとって利益が最大となるように利用するとすれば、公共政策に関しては無知になる。こういう考え方に触れた30年以上前の学生のとき、確かにそうだろうと納得し、私の思考のスタート地点に「投票者の合理的無知」が据えられたようなのである。

次ページ投票者の「合理的無知」をベースに民主主義を考える
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