韓国軍で発生、「性転換者」は軍人になれるのか 陸軍の除隊決定に本人は服務継続を希望
韓国陸軍の除隊審査委員会は1月22日、性転換手術を受けて女性兵士としての服務を希望した第6軍団第5機甲旅団所属のピョン・ヒス下士(下士官)について除隊を最終的に決定した。軍は規定どおりに判断したことをアピールしているが、性転換者の軍服務という問題に対し、あまりにも早急に決定を下したという指摘が出ている。
陸軍は同日、「除隊審査委員会ではピョン下士に対し、軍人事法などの関係法令上の基準にしたがって、『継続して服務できない事由に当たる』と判断し、除隊を決定した」と明らかにした。ピョン下士は1月23日から民間人となる。
性転換者の軍服務は適切なのか
ピョン下士は2019年11月の休暇中、タイで男性から女性への性転換手術を受けた。陸軍はピョン下士の身体の一部が性転換手術により大きく毀損されたことで「心身障害3級」と判定、除隊審査委員会の審議に回した。
ピョン下士は除隊を拒否し、女性兵士として今後も服務したいとの意思を明らかにした。市民団体である「軍人権センター」は1月20日、ピョン下士が申請した性別訂正許可に対する裁判所の判断が出される後まで、除隊審査委員会の開催を延期するよう求める緊急救済申請書を、韓国の国家機関である国家人権委員会に提出した。
これを受け、国家人権委員会は翌21日にピョン下士に対する緊急救済が必要と判断、陸軍に対し除隊審査を3カ月遅らせるように勧告した。性転換手術を障害と判定することは性差別になりうると判断したためだが、陸軍は同委員会からの勧告をすぐさま拒否し、予定どおりの手続きを進めた。
一部では、軍が十分に考慮・審議することなく除隊させることだけを考えた早急な判断だという指摘が出ている。陸軍法務官出身のキム・ギョンホ弁護士は「国家人権委員会の勧告や海外での事例などを綿密に調べて議論するなど、より真摯な姿勢を見せるべきだった。軍が人権委員会の勧告をすぐさま拒否したことは、早急な幕引きを図ろうとするものだ」と指摘する。
また、相当数の女性兵士らが「問題になることはない」との立場を明らかにするなど、軍内部での意見集約が足りなかったという指摘も出ている。
陸軍はそれでも、除隊決定は性別によるものではないと強調する。法令に従って「性転換者への差別」や「性転換者を継続して服務させるかどうか」と判断したのではなく、「身体が毀損した」という基準だけで判断したと説明する。また、公平さも考慮したと言う。陸軍関係者は「同じ心身障害判定を受け、除隊審査委員会で審議された軍人の中には、継続して軍務を希望する者が少なくはない。もしピョン下士の継続服務が許されれば、このような者との公平さという別の問題が生じる」と指摘する。
さらに、野外訓練など厳しい訓練が多く、団体生活を強いられる軍隊の特性を考えると、今後も手術やホルモン治療などが継続して必要とされる性転換者の軍服務は適切ではないと判断されたようだ。
軍における性転換者が服務できるか。このような問題に早めの対策を用意すべきだという声が強まっている。現在の韓国軍には、男性から女性への性転換手術を受けた軍人に対する服務規程と法令は存在しない。今後も同様な議論が発生する可能性があるが、国防省関係者は「規定制定などは検討していない」と明らかにした。(韓国『ソウル新聞』2020年1月23日)
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