「フェイクニュース」との正しい付き合い方 BBC責任者が語る虚偽情報被害の深刻な実態

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――一方で、それに対抗するべきメディアは資金的に苦しい環境が続いています。

メディアの資金調達は大きな課題だ。デジタル収入を得ることは非常に難しく、デジタルからの利益の大半は少数のプラットフォーマーが握っており、ニュースへの投資とリターンが釣り合わなくなっている。そのため、営利企業がジャーナリズム、とくに国際ニュースや調査報道へ投資するインセンティブがほとんどなくなっている。

その一方で、現在、ビル&メリンダ・ゲイツ財団など裕福な個人投資家や政府などがジャーナリズムに資金提供するケースもある。しかし、ジャーナリズムが少数の人によって制御されることにつながると危惧している。ジャーナリズムは多様であるべきだからだ。

国の資金や慈善資金、商業資金など多くの形で資金を調達する必要がある。われわれメディアは、営利企業が質の高いジャーナリズムに資金を投入することができる形を探す必要がある。

フェイクニュースをなくすことはできる

――2020年にはアメリカ大統領選があります。トランプ大統領が当選した2016年の選挙はフェイクニュースの始まりとも言えるようなものでした。

多くの人がフェイクニュースは2016年の話で、現在まで続くとは思っていなかっただろう。しかし、この問題は20年以上にわたって付き合っていかなければいけない話だ。

当時よりもメディアはフェイクニュースに対して警戒感を抱いている。前回と比べてフェイクニュースに対する準備もできている。2016年の失敗から学んだことを2020年の選挙時には示すことができるだろう。

――しかし、フェイクニュースは一向に衰えを見せません。これをなくすことは可能だと考えていますか。

私は楽観主義者なので、答えは「Yes」だ。技術の発展、AIなどがわれわれを助けてくれるだろう。しかし、そのためには報道機関やプラットフォーマー、政治家、官僚などの連携が必要だ。多くの利害関係者がいるので、長時間に及ぶだろう。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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