中韓鉄道メーカー、「欧州本格展開」への高い壁 東欧などで受注獲得、信頼と技術向上がカギ
さらに2015年には、その中国メーカー2社が合併、中国中車というモンスター企業が誕生することになった。しかしアジアのメーカーには1つの壁があった。高い技術力が要求される、欧州市場への参入である。
数字だけを見れば、今や中国中車は欧州系メーカーを完全に凌駕する売上高を誇る。ただ、それは全体の90%以上を占める国内需要によるもので、他国、とりわけ欧州で評価を得て、世界全体で売り上げが高まったわけではない。
中国は、要求水準が高い欧州での評価に価値があることを理解しており、売り込みに必死だ。同社は、オーストリアのウィーンに欧州拠点を置いて営業活動を続けており、ベルリンで2018年に開催されたイノトランス(国際鉄道見本市)では、これまでアジアメーカーとしてはなかった車両展示を初めて実現させるなど、積極的な営業活動を行っている。
展示されたのは2両で、1両は同社の念願だった欧州向け鉄道車両の第1号であるハンブルクSバーン向けハイブリッド式入換用機関車、もう1両は参考出品で持ち込まれたカーボン製車体のコンセプト車両CETROVOだ。両車は会場で最も注目を集めた展示車両だったのは間違いなかった。
技術力アピールに努力
その後、同社は欧州のTSI(The Technical Specifications for Interoperability/相互運用性の技術仕様)に準拠した新型電気機関車バイソン(BISON)を開発、試作した機関車2両をハンガリーの貨物運行会社レイルカーゴ・ハンガリーへ4年間リースする契約を交わしている。
この契約には、期間中のフルメンテナンスの費用なども含まれており、試運転を兼ねたリース期間中の開発費用は中国中車が負担する。契約期間満了後はリースを延長するか、鉄道会社側がそのまま車両を買い取るかの選択が可能で、20両の追加発注オプションも含まれているという。
ここまで手厚いサポートをする目的は、同社の技術力を欧州各国に認知してもらうことにほかならないだろう。同社はその間にもドイツ・フォスロー社の入れ換え用機関車部門を買収するなど、欧州での地盤を着実に固めてきた。
だからこそ、今回のウェストバーン車両更新案件の失注は、同社にとってことのほか残念だったに違いない。
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