中韓鉄道メーカー、「欧州本格展開」への高い壁 東欧などで受注獲得、信頼と技術向上がカギ

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日本も、多くのメーカーは中韓と同様、これまでは一部のアメリカ向けやアジア向けを除いてほぼ国内需要に終始していたが、日立はあえて欧州へ渡り、技術力と信頼性を武器として徐々に評価を高めていった。

イギリス南東部で運行される465系電車。導入当初は故障続きだったが、足回りを日立製へ更新してから故障がまったくなくなり、日立の性能や信頼性を証明した(筆者撮影)

最初はイギリスに進出し、その後イタリアのアンサルドブレダ社を買収して大陸側にも工場を持ったことで、欧州で確固たる地位を築きつつある。イギリスのEU離脱問題についても、イギリス側と大陸側の両方に工場を持つ同社は影響を最小限に抑えられるだろう。

では中韓メーカーが、鉄道先進地域である欧州市場へさらなる進出を果たすために、何が必要となってくるのか。

当然だが、これまで欧州系メーカーが納入してきた車両と同水準の技術と信頼性がなければ話にならない。だが客観的に見て、中国や韓国といった、日本以外のアジア系メーカーの車両や部品の精度、および技術力や信頼性については、現状ではまだ日欧メーカーの域に達していない。

「安さ」以外に売りを磨けるか

唯一勝っているのは価格だ。日欧メーカーよりかなり格安であることから、現時点で市場へ入り込む隙があるとすれば、低予算でしか車両の調達ができない経済基盤の弱い国や会社へ売り込むということになる。

イノトランスに展示されたシュコダ(チェコ)製のドイツ・ケムニッツ市向けトラム。同社は技術力も高く、現在は西欧諸国へも多くの車両が輸出されているが、価格面での優位性は薄れつつある(筆者撮影)

ワルシャワのケースがまさにこれで、欧州では比較的価格が安いとされる中欧メーカーのシュコダやペサ、ソラリスすら価格面でかなわなかった。中国中車が狙っていたウェストバーンの案件も、あと一歩で受注を獲得できるというところまで到達した。

ただ、こう言えば中韓の両メーカーからは心外だと抗議されるかもしれないが、これまで欧州の各鉄道事業者が本格的に採用していない、という点に、現状での両社の製品に対する認識が現れている。

両社が欧州市場へ進出するためには、これまで欧州や日本のメーカーが何十年もかけて積み重ねてきたのと同じだけの努力を必要とする。技術力も信頼性も、一朝一夕で身に付くものではない。

とはいえ、とりわけ中国中車は他国の技術をうまく吸収し、急激な成長を遂げている途上で、しかも今では約3万kmにも及ぶ高速鉄道網へ車両を供給するメーカーとなった。この世界最大の高速鉄道網で、毎日得られる膨大な量のデータや、それに基づく知識や経験は、やがて彼らの技術力および信頼性向上の大きな糧となることは間違いない。

日欧メーカーは、現状に満足してあぐらをかいていれば、彼らが競争力を付けてきた際に追い越される可能性も否定できない、ということを肝に銘じなければならない。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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