鳩山内閣は8カ月目で最初の危機に直面!?

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鳩山内閣は8カ月目で最初の危機に直面!?

塩田潮

 政権担当能力を測るには、政策構想力、政策実現力、政権運営力、危機管理力が重要なポイントとなる。民主党は「政権準備党」13年の蓄積があり、政策構想力はそれなりに備わっているが、問題は残りの3点だ。

 新政権発足から50日余が過ぎたが、スタート当初の威勢のよさはどこへやら、迷走が目立ち始めた。虚偽献金問題では相変わらずドジでお粗末な素顔を露呈する鳩山首相、さっぱり影が薄い菅副総理、普天間基地移設問題で不統一をさらす岡田外相や北沢防衛相や平野官房長官、事業仕分けチームの人選で小沢幹事長の一撃を食らってやり直しを余儀なくされた仙谷行政刷新相、日航問題で「腹案あり」と大見得を切って再建を託した再生タスクフォース「前原チーム」の退場で形無しの前原国交相等々、就任時に輝いていた金メッキが落ちて、地金が見えてきた印象である。

 政策実現力、政権運営力、危機管理力は結局、政権与党の総合的な人材力が決め手となる。野党転落前の自民党政権は末期症状のオンパレードだったが、致命的だったのは人材枯渇であった。国民はそれを見て、民主党に政権を委ねる気になった。民主党の場合、人材の素材としては自民党に見劣りしないが、経験不足による未熟、拙劣、浅慮がつきまとう。
 いまのところ、国民は性急に答えを求めず、政権交代による効果の成否を気長に見守る構えだが、忍耐の限度は半年ないし9カ月程度だろう。来年3月頃か、参院選がある6~7月までに迷走や停滞を脱して実効を示さなければ、政権は危機に見舞われるだろう。

 鳩山首相は国会答弁で「4年後にマニフェストの実現を問う総選挙を」と述べた。在任8カ月で沈没した細川元首相の轍は踏まないと強く意識し、長期政権維持と早期解散否定の姿勢を示している。だが、首相の計算とは裏腹に、現政権は早ければ8カ月目あたりで最初の危機に直面する可能性がある。鳩山内閣はそれを乗り切る人材力を備えているかどうか。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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