「調達通貨」は円からユーロに交替したのか 欧州の日本化、ユーロの円化はやはり進んだ
しかし、ユーロに関し「危機時に買われた」という事実が確認できたのは興味深い点でもあった。のりしろが消えつつある金融政策や巨大な経常収支を踏まえれば、ECB(欧州中央銀行)の「日銀化」やユーロ圏の「日本化」はじわじわ進んでいると筆者はかねてより考えているが、ユーロの「円化」も発展途上ではあるが、進行していると考えられる。
今回の中東リスクは一過性の動きとしていったん収束したが、そうしたユーロ相場の性質変化を読み取ることができた。筆者が『欧州リスク:日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)を上梓してから約5年半が経った。ユーロが「円化」するまでの論点や仕組みについては同著の解説や東洋経済オンライン記事『注目の「ユーロ圏の日本化」を元祖が徹底解説』を参照いただきたい。
日本化は着実に進んでいる
本を発刊した2014年当時、ドイツ10年金利は2%付近にあったが、今やドイツも日本と同様のマイナス圏に落ち込み、恒常的に日本を下回っている。
これはECBが日銀化していることの1つの結果にすぎないが、そもそも域内に魅力的な投資機会が失われており、貯蓄と投資をマッチングさせる金利(自然利子率)が下がっているということ、言い換えれば域内の潜在成長率が下がっていることの帰結でもある。
ユーロ圏に関する「日本化・円化・日銀化」のシナリオは徐々に、しかし確実に実現している。とりわけ今回の中東リスクに絡んだ反応は「ユーロの円化」を再度疑わせるものであったように感じられた。ユーロ圏の経済・金融情勢が非常に日本に近くなってきているという論点は引き続きウォッチしていきたい研究テーマである。
※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です
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