新聞・出版界の既得権、本の“ニセ金化”を生んだ「再販制度」なんてなくていい--永江朗・ライター兼早稲田大学教授

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もっと自由に議論をしましょうよ

出版社や取次だけでなく、書店の側も再販を守れっていうのが公式見解なんだけど、少なくとも私が取材で出会う、意欲的な書店経営者は、再販なんかなくたって構わないと言いますね。

今の問題点は何かというと、再販とセットになった委託販売制で、書店は売れない本は取次に返せることになっていること。出版社は大量に本を作り、それを仕入れた取次は配本をセットにして書店に送りつける。書店は配本を店頭に並べて、一定期間が過ぎたら取次に返品する。こうした委託配本がシステムとして出来上がってしまった。出版社からすれば取次が集金もしてくれるから、どんどん本を出し続けている。

これを私は、本の「ニセ金化」とよんでいるのだけど、一応、自転車操業のようにおカネは動いている。出版関係者は本の数が多くて、委託販売と再販は切り離せないと言う。

しかし本当にこれでいいのですかと、問いたい。すべての出版物が委託配本になっているから、いい本ならば買い取りで仕入れて自分のお客さんに売りたい、という意欲的な書店も排除してしまっている。

再販は是が非でも維持しなくてはいけないものではなく、再販も非再販もどっちもあり、というやり方にすべきだと思います。

profile
ながえ・あきら

1958年生まれ。洋書輸入販売会社に勤務後、ライター兼編集者に。2008年から早大文学学術院教授。近著の『本の現場』は非再販で販売中。

(週刊東洋経済 撮影:吉澤菜穂)

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