日本で外国人留学生がこんなにも目につく理由 30万人計画は達成したが本懐は果たせているか
「アルバイトを通じて、わが国の文化、社会を理解することが国際交流を深めるうえで有意義であるとの秦野法相の考え」(読売新聞)
「アルバイトの『原則自由化』は西欧先進国にも例がない。各国で事情が違うため、一概に比較ができない面はあるが、世界でも画期的な方針としている」(朝日新聞)
「秦野法相はこの改善策によって『留学生がアルバイトで日本の実社会を体験して、日本をよく理解してもらえるのでは』と期待している」(中日新聞)
秦野法相とは、70年安保の時代には警視総監を務め、〝武闘派〟として知られた秦野章のこと。アルバイト解禁の背景には「経済大国としての責任を果たすべき」というような、いまからすると少々牧歌的な意識があったようにも思われます。
留学生30万人計画の行方
その後、留学生の数は〝順調〟に増え、1998年には「原則的に週28時間まで」のアルバイトができるようになりました。そして、1980年代に行われた「留学生10万人計画」を踏襲する形で「留学生30万人計画」が打ち出されたのが2008年。当時、約14万人だった留学生を2020年に30万人まで増やすべく施行されました。
当時の担当官のコメントが、2019年の夏までオフィシャルサイトに残されていました。
「グローバルな時代の中で、日本が、高度人材の大きな供給源となる留学生を高等教育機関に積極的に受け入れていくということは、日本の国際的な人材強化につながるのみならず、日本と諸外国との間に人的なネットワークが形成され、相互理解と友好関係が深まり、世界の安定と平和への貢献にもつながることだと考えています」
よそ行きの美辞麗句で飾られていてわかりにくいのですが、つまり、政府は「高度人材をより多く受け入れる」ことを至上命題に留学ビザの要件を緩和し、世界中から留学生をどんどん受け入れたということがわかります。しかし、いざフタを開けてみると、高度人材に結びつくようなエリート留学生の数はあまり増えませんでした。
拙著『コンビニ外国人』という本の取材では、東京大学の大学院で学ぶベトナム人留学生から話を聞きましたが、彼のような存在は、全体から見ればほんの一握りです。留学生の多くは、日本語学校や専門学校に通う人たちで、出稼ぎを目的にした留学生も少なくありません。
実際、東大の留学生が日本の企業に就職する割合は3割程度と言われていて、政府が目論んでいたような「高度人材の供給源」になっているとは言えないのではないでしょうか。
端的に言って、高度人材を呼び込むプラットフォームだったはずの「30万人計画」の失敗は明らかになった、というわけです。
しかしながら、〝労働力を確保する〟という意味合いにおいては「30万人計画」は皮肉にも成功しています。ひょっとすると、もとからそういう意図があって計画されたものだったのか、そんなふうにも訝ってしまうわけです。
目標を前倒しして30万人計画を達成したいま、「ポスト留学生30万人計画」はどうなるのでしょうか。
さらに受け入れ人数を増やして「50万人計画」とするのか。「100万人計画」とするのか。学生不足で経営難に悩む大学や専門学校、特定技能1号が指定する14の職種から漏れたコンビニ業界などは、もっともっと留学生の数を増やしたいはずですが、担当の文部科学省は、留学生が30万人を超えて1年が過ぎても沈黙したままです。
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