日本が「失われた20年」から脱却する3つの理由 人件費、GDP、外国人保有比率から見えること

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山本:日本ではよく「三方よし」という言葉が使われますが、1990年代より前はまだ、取引先も「自分たちだけが儲けてはいけない」という日本的なビジネス習慣があったのかなと思います。そのあと「背に腹は代えられない」と利益追求主義に走る面が出てきましたし、外国人の保有比率も増えてきたということで変わってきたように思います。昨今の建設業界をはじめとする人手不足というのは、再度この転換を促すような、いいきっかけになっているのかなと思いますね。

1人当たりGDP伸び率が低下した理由とは?

――この先はGDPも上向きになると考えてよいのでしょうか。

北野:GDPよりも注目したいのは、1人当たりGDPの伸び率です。グラフを見てください。日米の1人当たりGDPの成長率を比較してみました。注目いただきたいのは、かつてアメリカよりも高かった日本の1人当たりGDPの成長率が1990年代後半、一気にアメリカを下回ってしまったという点です。これが「失われた◯◯年」を生み出した、大きな要因ではないかと思っています。

「日本がダメなのは人口が減っているからだ」という論者がこのグラフを見ると、近年、日米の1人当たりGDPの伸び率が同じになっていることから「1対1ではアメリカに負けてないけれど、人口が減っているから経済が振るわないんだ」という話になりがちです。

ただ、日米の1人当たりGDPの伸び率が同じになったのはごく最近の話。アメリカはリーマンショックを受けてこうなったのです。それよりも、1990年代後半に日本の1人当たりGDPの伸び率がなぜここまで落ちたのかということを考えるほうが重要です。

その理由を説明しましょう。1人当たりGDPというのは、分子がGDPです。GDPというのは付加価値額とほぼ同義。そして、付加価値額のうち、7割を占めているのは人件費です。したがって、人件費を減らしてしまうと付加価値額は伸びないし、結果的に1人当たりGDPも落ちてしまうということです。

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