全体的に生活感の薄い家で、とく共有スペースであるはずのリビングはハウススタジオのようにきれいです。
「最初はみんな盛り上がってかわいいカーペットとかこたつとか買ったんですけど、2年間まったく使いませんでした」
全員仕事の帰りが遅いため、一緒に食事をする時間どころか、家で食事をする人すらほとんどいないそうです。一緒に住んではいますが、いつもお互いが部屋にいるのか、いないのかすらわかっていません。
「ちょっと疲れちゃったから……」
答えの続きをふとつぶやいた後、すぐに「環境を変えようって感じです。いろいろあったんで」とさっきの言葉を打ち消すように、仕事を辞めるに至った理由を話してくれました。
思い詰めているというよりは、すでに諦めがついているような、前向きな話しぶりでした。
踏み切れなかった転職を実行した理由
彼女が話す「いろいろあった」には、物件の更新以外にも主に2つの事情があります。
1つは上京してからつねに仕事が立て込んでいたこと、そして決定的に人生が変わったのは私生活で起きた別れがきっかけでした。
しゅが〜ちゃんさんが映像を編集している番組は、月曜日から金曜日まで毎日放送されていて、入社してから今日までの4年間、1人で作業を担当してきました。1週間分の番組を、1週間かけて編集するのです。
女の子らしいメイクポーチやヘアアイロンが並ぶ部屋には、栄養ドリンクやアイマスクもずらりと並んでいます。
「今の仕事を引き継げる代わりの人が見つかったら辞めよう」。ずっとそう思ってはいましたが、おちおち風邪も引けないスケジュールの中でそれを探すのは難しく、辞めるに辞められない状況が続いていました。
現在もまだ引き継いでくれる人は見つかっていませんが、それでもずっと踏み切れずにいた転職を実行したのは、20歳の頃から6年間付き合っていた恋人と別れたのがきっかけでした。まだひと月前のことです。突然の別れでした。
「地元の大阪に住んでた頃から付き合ってて、東京に来てからは4年間遠距離恋愛をやっているんですけど、別れちゃったんですよ」
仕事が忙しくて連絡を取れなかったときのことがたくさん思い出されました。
失恋したからといって仕事のスケジュールは変わらず、悩む暇ができるわけでもありません。それでも離れてくれない悲しみに、働いて、仕事が終わったら泣いて過ごす日々が続きました。このままではいけないと、彼から別れを告げられたことで痛感したのです。
そこからの行動は早くて、あんなに辞められないと思っていた仕事も、はっきり辞めると決めたら辞められることになりました。
忙しいけれど、暮らしていくのに不自由はないし、東京の街もそれなりに楽しい。でも東京からも離れて、大学に通っていた京都の街で就職を決めました。今の仕事を辞めたらすぐに京都へ引っ越して、新しい仕事を始める予定です。
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