日産「再建のキーマン」退任で深まる混迷 関・副COOが次期社長含みで日本電産へ移籍
日産ではゴーン事件以降、若手・中堅を中心に経営の混乱に嫌気が差した社員の退職が相次いでおり、今回の関氏の退任で優秀な現場社員の離職が加速する可能性もある。別の中堅社員も、「関さん以外にも日本電産に優秀な人材が引き抜かれていくのではないか」と危惧する。
関氏が日産を去ることを決めたのは、トップになれる可能性が事実上消えたことが大きい。辞任した西川前社長の後継者として、関氏は大本命だった。経済産業省出身で指名委員長の豊田正和社外取締役も関氏を推していた。ネックになったのは、筆頭株主のルノーとの関係だった。関氏は日産とルノーの関係見直しを持論としていたため、ルノーのジャンドミニク・スナール会長が社長就任に難色を示したのだ。
「カリスマ経営者」の後継候補に
加えて、関氏は西川前社長時代に最重要の業績回復担当に抜擢されるなど重用されたため、西川体制からのイメージ刷新を狙った一部の指名委員の支持を得られなかった。折衷案として、ルノーからの信頼が厚い53歳の内田氏が社長に選ばれ、関氏は「副COO」という聞き慣れない肩書きを与えられた。これで関氏が将来社長に就く芽は完全に消え、本人にとっては失望が大きかったのだろう。
「社長」職に意欲を燃やす関氏の移籍先である日本電産は、京都に本社をおく世界最大のモーターメーカーだ。同社を率いるのはプレハブ小屋で創業し、45年で売上高1.5兆円の大企業に成長させた創業者の永守重信会長。カリスマ経営者として名高く、数々のM&Aを手掛けて事業を拡大させてきた。
一方で、大規模化した会社に合った後継者を育成できていないことが、同社の大きな課題となっている。これまでも永守氏は後継候補と目した人材を外部から登用し、一部事業を担わせて、利益目標を達成できるかで人材をテストし続けてきた。今回招聘する関氏にも経営を担う人材として大きな期待を寄せる。
永守氏の後継者として、これまで特に有力視された人物は2名。2014年に日本電産のCOOについた呉文精氏と現社長の吉本浩之氏だ。呉氏は日産系部品メーカーだったカルソニックカンセイ(現マレリ)を、吉本氏もカルソニックカンセイと日産を経て、日本電産に入社した。呉氏は永守氏が課した利益率などの目標を達成できなかったとされ、2015年に退職した。