自分の「スケジュールを隠す人」が大成しない訳 1300年前の「オープンな組織」に学ぶ

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①は、「歴史の鏡」(過去に照らして、将来に備えるための鏡)をもって、過去の事例から学ぶことです。中でも、太宗は、先人の成功体験ではなく、失敗体験から学ぶことの重要性を説いています。

歴史を見ればすぐわかることですが、人間は、同じ失敗を何十回も繰り返しています。先人の失敗を学ぶということは、同じような失敗を自分で犯すリスクを減らすことにもつながります。

②と③は対句になっています。

要するに、「ヒソヒソ話や、与太話(讒言)は聞くだけ無駄。そんなものを聞いていると、心が病んで、判断がおかしくなってしまう。よい政治をするためには、善人をそばに置き、閣議を設け、みんなで一緒に議論をすることが大切だ」ということです。

部下も、上司に言いたいことがあるのなら、こっそりメールをしたり、お酒の力を借りたりせずに、しかるべき場所で、堂々と意見を述べるべきです。

情報はすべてオープンにすべきだと太宗は考えていたのです。

情報は隠さず、つねにオープンにする

日本生命に勤めていた時代、Aという社長は、自分のスケジュールをすべてオープンにしていました。すると、「いつ、誰と会っているのか」「何をしているのか」が見えるので、下からの報告がとてもしやすくなります。また、周囲は社長に対して安心感を覚えます。そして、社長自身も、スケジュールが公開されている以上、おかしなことはできなくなります。

一方で、Bという社長は、スケジュールをすべて非公開にしていました。社長のスケジュールがブラックボックス化すると、部下は報告のタイミングをつかめなくなりますし、「社長は何をしているんだろう?」と不安になります。

僕はライフネット生命時代、原則としてすべてのスケジュールをオープンにしていました。もちろん、APU(立命館アジア太平洋大学)でも学長のスケジュールはすべてオープンにしています。また、僕の許可なく誰でも僕のスケジュールに勝手に書き込むことができるようにしています。

スタッフは、学長という機能を果たしている僕を自由に使えばいいのです。APUのスタッフは普段からAPUのことをよく考えているはずですから、僕は黙ってスタッフの指示に従えばそれでいいのです。仮に変な予定が入ったら、これは何故かとスタッフにたずねればいいだけの話です。

オープンな組織をつくり、オープンな議論のうえで組織の進むべき道を決めるのが、公正な組織のあり方です。リーダーと特定の部下が、ヒソヒソ話を好んでいるかぎり、正しい判断を下すことはできません。

「善人を進用(進め用いる/登用する)し、共に政道を成す」「群小を斥け棄て、讒言を聴かず」という太宗の考えの中に、マネジメントの永遠の課題である「フラットでオープンな組織」をつくることの重要性が読み解けると思います。

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