目標は「意志の力」で達成できるほど甘くない 目標を達成したい人は「環境」を作る事が重要
また、「お金を投資」してしまうという方法も非常に有効だ。経済分野で「サンクコストの呪縛」として知られる原則がある。人は何かに投資して所有すると、それを過大評価してしまうというものだ。そのため明らかに進むべきでない道を進み続けたり、やめるべきものを追い続けたりする。
とはいえ、人間が持つこの傾向を、自分の利益となるように活用することもできる。金銭を先んじて投資することで、あえて取り組まざるをえない状態を作り出すのだ。
「帰還不能点」を通過する
私が組織心理学者としてずっと研究しているのは、まさにこの「どうすれば物事に100%打ち込めるようになるのか」ということだ。具体的には、私はこれまで「帰還不能点」と名付けたコンセプトを研究している。目標を避けるよりも、前方に向かって進むほうが楽になるというポイントで、「乗ってきた船を燃やして、前に突き進むしかない」そんな過去を振り返らなくてもよくなる瞬間ともいえるだろう。
そして、帰還不能点の経験は主に、「金銭の投資」という形で始まる。金銭を投資することによって、人は前へ進まざるをえなくなるのだ。
一度投資してしまえば、その人のアイデンティティー、そして目標への姿勢そのものが変わる。「つぎ込んだ資金」を失わないように、そして自分がしてきた行動の「一貫性」を保ちたいという心理が強く働くためだ。
起業家と企業志望家との決定的な違いもこの点にある。起業家は、何らかの形で帰還不能点を経験していた。一方で起業志望家は、そのような経験を作り出していなかった。
また、地理的な場所に関連していえば、「新しい場所」で作業をすると集中しやすくなる。ナポレオン・ヒルの言葉を借りるなら、「いい意味でのショックは、多くの場合、習慣で衰えた脳の役に立つ」のだ。目新しさは、強いフローの状態を引き起こす主要な強制機能の1つとなる。
ただし、1つ注意が必要なのは、これらの状況や環境が「自分が選び取ったもの」でなければ役に立たないということだ。誰かが変えてくれた環境に、長期的にそこに適応できる可能性は低い。あなたは環境の産物だが、その環境はあなた自身が積極的に下した決断でないといけないのだ。
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