ファスト食VS.地産地消でフード離婚

"右”と”左”、なぜ理解し合えないのか

それまではご飯を食べながら、二人でバラエティー番組を見るのが好きだったが、今は共通の話題はほとんどなくなった。原発についても、「安く電力を供給するためには絶対必要」と譲らない夫とは話ができない。

「夜、夫が起きたら、すぐに消せるよう、テレビのリモコンを握りしめながらK-POPの映像を見ていて、何で自分の家なのに、こんなに気を使わなきゃいけないんだろうって悲しくなった。夫との距離を感じるようになりました」

生活の延長の政治

ベジタリアンと反原発。ジャンクフードと愛国──。

一見何の関係もなさそうだが、ライターの速水健朗さんは昨年12月に出版した著書『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』のなかで、そんな食と政治意識の相関関係を「フード左翼」と「フード右翼」と名づけた。

食べ物をめぐる選択肢や情報があふれるいま、値段や手軽さを重視するのか、農薬や遺伝子組み換え作物の使用の有無を気にするのか。国産か、世界的大企業がつくった製品を選ぶのか。どのポイントを重視しているかで、その人の政治意識や思想が見えてくるという。

「地産地消を重んじ自然食を食べる人と、ジャンクフードばかり食べる人は、やっぱり相いれない。日本人は保守やリベラルなど、政治的レッテルを貼られることを嫌いますが、食というフィルターを通すと、建前ではなく、生活の延長として政治をどう考えているのかが見えてくるんです」(速水さん)

ジャンクフードやB級グルメ、コンビニの「メガ盛り」など量や値段を重視する人たちをフード右翼、現在の大量生産・大量流通のシステムに批判的で、健康志向の強い人たちをフード左翼と呼ぶ。「右」「左」の定義についても議論があるところだが、グローバリズムや新自由主義経済に賛同し、愛国など道徳観を大切にする人を右、現状に批判的で人権や平等な分配を重要視する人たちを左とした。

では実際に、消費行動と政治意識は関連があるのだろうか。

アエラでは1047人を対象にインターネットでアンケートを行った。結果、コンビニで弁当や総菜を購入する回数の多い人ほど、社会保障は不十分でも税金などの負担は軽くすべき、と答えるなど、比較的「右」傾向が強く、遺伝子組み換え食品や食品添加物を気にする人は、原発再稼働に反対する人が多い「左」傾向が強かった。

大手出版社に勤めるBさん(36)の妻(45)も典型的なフード左翼の一人だ。フランス人で大学の講師。もともと、米国的なグローバリズムには反対で、世界的に展開するハンバーガーチェーンでは食べず、フェアトレードや有機野菜を選ぶ傾向が強かった。

夫は「右翼」妻は「左翼」

そんな妻が突然、「今日からベジタリアンになる」と宣言したのは昨年10月。米国の食肉産業の実態を告発した本を読んだことがきっかけだった。

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