昭和電工、「小が大を飲む」9640億円買収の成否 社運賭け、「御三家」日立化成を公開買い付け

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その昭和電工が飛躍のきっかけをつかんだのは、2年前に打って出た、ある買収があった。

2017年当時、昭和電工は構造不況にあえいでいた電炉向け黒鉛電極事業で、世界2位のSGLカーボン(ドイツ)を約150億円で買収した。黒鉛電極とは、鉄スクラップを溶かして鋼を作る電炉で使われ、世界の粗鋼の4分の1が電炉で生産されている。

ただ、中国で蔓延していた「地条鋼」と呼ばれる粗悪な鉄鋼の影響で、鉄の値段が下がる「鉄冷え」が発生。電炉用黒鉛電極の市況もそのあおりを受けていた。昭和電工の黒鉛電極事業は2013年から2016年の間は赤字で、「そろそろ市況は回復する」(森川社長)との読みのもと、打って出たのが、当時「無謀」と評された2017年の買収だった。

読みがぴたり的中、黒鉛電極で業績急回復

昭和電工の「読み」はぴたりと的中する。買収直後に中国政府が地条鋼の取り締まりを強化。その結果、中国各地で電炉を使用した粗鋼生産が増え、高品質な黒鉛電極の需要が急増した。昭和電工の2018年12月期の営業利益1800億円の7割以上、1324億円を黒鉛電極を中心とする「無機」事業部門が稼ぎ出した。

それにつれて財務体質も大幅に改善し、2015年12月期に1.2倍だったD/Eレシオ(株主資本に対する負債の比率)は0.62倍まで改善した。

ただ、今回の日立化成の買収額は約9640億円。2017年当時とは桁違いの財務リスクを取ることになる。買収相手である日立化成の資産を担保にしたノンリコースローンでの借り入れが多いため、昭和電工は「無理のない借り入れだ」と主張する。

買収後のD/Eレシオは1.6~1.7倍程度に悪化。昭和電工は早期に1倍未満にできる見通しだと説明するが、頼みの黒鉛電極市況が再び悪化しつつあり、2019年12月期の業績は減益を予想している。

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