相鉄・JR直通線、「遠い駅」のほうが安い運賃の謎 直接行けない隣駅、「特例」適用で170円

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JR東日本以外にも例も示そう。本州―四国間の「宇多津以遠(丸亀方面)の各駅と児島以遠の各駅との相互間」だ。

これは、例えば岡山から高松行きの快速「マリンライナー」に乗り、途中で乗り換えて予讃線の丸亀や多度津方面に向かう際に意味がある。瀬戸大橋を渡る本四備讃線と予讃線は宇多津で接続しているが、マリンライナーは短絡線を経由して坂出に向かい、宇多津を通らないので、予讃線の丸亀・多度津方面へは坂出で乗り換えることになる。

この場合、宇多津―坂出間を往復乗車することになるが、同区間は運賃計算に含めないことになっている。

【2019年12月21日11時50分追記】記事初出時、運賃計算に含めない区間についての記述に誤りがありましたので、上記のように修正しました。

実際に乗ってみると…

相鉄・JR直通線の開業からしばらく経った12月の平日、実際に鶴見から羽沢横浜国大まで行ってみることにした。鶴見の券売機で乗車券を購入。170円である。なお、武蔵小杉までも170円だ。

12時29分に京浜東北線に乗り、鶴見を出発。横浜には12時38分に着いた。12時43分発予定の横須賀線・成田空港行きに乗り換える。列車は2分遅れで横浜を発車した。路線が違うとはいえ、もと来た道を戻っていくという感じは拭えない。

列車はスピードを上げ、12時51分ごろ鶴見を通過。横須賀線にはホームがなく、京浜東北線のホームの西側を走る。進行方向右側に貨物線が並行するようになり、12時54分に新川崎着。武蔵小杉には12時57分に着いた。

ここで折り返し羽沢横浜国大方面へと向かう。駅の案内表示を見ると、12時53分発の列車が遅れており、58分にやってきた。相鉄線内特急の海老名行きだ。この列車に乗れば、次は羽沢横浜国大だ。

羽沢横浜国大駅の駅名標。隣は武蔵小杉だ(撮影:大澤誠)

また同じところを戻るのか、と思うが、横浜から乗ってきたのは横須賀線で、これから乗る列車が走るのは品鶴線と東海道貨物線なので、見える風景はちょっと違う。13時05分ごろ再び鶴見を通過。今度は京浜東北線ホームの東側だ。ここからようやく、本来の乗車区間に入る。列車はすぐに長いトンネルに入り、13時12分に羽沢横浜国大に到着した。

鶴見を出てから2回も鶴見を通過してたどり着いた「隣の駅」羽沢横浜国大。鶴見にホームがあり、直接行くことができればおよそ6~7分で着くはずだ。ただ、何度も折り返すのは面倒ではあるものの、もし特例がなければ重複分の運賃を払わなければならず、170円では行けないことになる。運賃制度は複雑ではあるものの、なかなか工夫されているのだ。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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