東急世田谷線、意外に「混んでいる」のはなぜ? のんびりだが通勤・通学の足、観光スポットも

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上町駅から世田谷駅、松陰神社前駅にかけては世田谷の古くからの中心市街地。松陰神社前駅は、その名の通り松陰神社の最寄り駅でもある。駅の横の踏切を挟んで伸びる商店街も見どころの1つ。昔ながらの商店とおしゃれなパン屋さんやらが共存する、そうした商店街だ。

10年ほど前にこの商店街にあった「パンチパーマ タカハシ」という理髪店に取材で訪れたことがある(今回訪問したときにはなくなっていた)。近くにある国士舘大学の体育会系の男たちがパンチパーマにしてくれと盛んにやってきたのだという。体育会系の男がパンチパーマとはずいぶん昭和なエピソードで、今の商店街の雰囲気からは想像もつかないが、そうした時代がほんの少し前にあったのだ。

遮断機がない踏切

松陰神社前駅のお隣、若林駅を出ると世田谷線にとって最大の見せ場がやってくる。環状七号線との交差だ。交通量が極めて多い環七の流れを妨げないよう、普通の踏切とは異なり道路優先。信号のタイミング次第では電車が“信号待ち”をせねばならぬ(電車が歩行者と同じ立場、ということだ)。そしてここに“運転士の腕の見せ所”があるという。

ここで世田谷線管区首席助役の室井健治さんにご登場願おう。室井さん、長きにわたって世田谷線の運転士を務めたキャリアを持つ。

環七と交差する若林の踏切を通る招き猫電車(筆者撮影)

「通常、自動車側の信号サイクルは約2分、歩行者の信号が青から赤に変わるのが約20秒。この約20秒の間に電車が決まったポイントを通ると世田谷線側の信号が最大で約2分延長されて通ることができます」(室井さん)。

逆に言うと、この“20秒”を逃すと信号が赤になり、道路の手前で約1分半待たねばならない。この“信号待ち”を避けられるかどうかが運転士の腕なのだ。

ダイヤ通りに運行されていれば、途中での対向列車とのすれ違いのタイミングなどはほぼ一定。そこから、信号のタイミングを推し量って速度を落とすなどして調整し、信号待ちの停車をしないで済むように運転しているのだ。

「まあこればっかりは経験ですよね。速度を上げることはできないから100%というわけにはいきませんが、ベテランになると肌感覚でわかるんです。ああ、ここで少しゆっくり走れば信号待ちしないですむな、と」(室井さん)

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