東急世田谷線、意外に「混んでいる」のはなぜ? のんびりだが通勤・通学の足、観光スポットも

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せっかくなので、佐藤さんに世田谷線の特徴を尋ねた。「沿線は東京のふるさとのような、都会でもなく田舎でもない、のどかなところですね」(佐藤さん)。そして、地元との距離の近さが最大の魅力だという。

「普通の電車は乗務員室との間に仕切りがありますが、世田谷線はないですからね。お客さまから『ありがとう』『おはよう』と声をかけていただくこともある。乗務員にとって、すごくやりがいにつながる、うれしいことなんですよ。こういうことがあるのは世田谷線ならではじゃないでしょうか」(佐藤さん)

世田谷線が最もにぎわうのは、12月15・16日と1月15・16日に開かれる世田谷ボロ市。毎年1日に20万人もの人たちが世田谷駅から上町駅にかけてのボロ市会場を訪れる。世田谷線も臨時ダイヤで運行するほか、駅での運賃収受などのために応援の社員も駆けつけるという。

社員も「乗客と触れ合える」

「この応援にね、毎年のように来る社員がいるんです。本当に寒い時期でずっと外に立ちっぱなしの仕事なんですけど、お客さまと直に触れ合う機会がほしい、世田谷線の雰囲気が好きだ、と」(佐藤さん)

確かに普通の駅や電車の業務では、お客との触れ合いはめったに見られなくなった。車掌が車内検札をするわけでもなく、駅でもお客は自動改札を抜けていく。けれど、世田谷線にはかつて当たり前だった乗客と鉄道員たちの交流が残っている。

山下駅前の花壇。沿線の人たちと東急が一緒に取り組むプロジェクトだ(筆者撮影)

また、沿線の大学の学生たちが車内で講座を開くイベント列車を走らせたり、上町の車庫でのイベントに学生が手伝いに来たり、さらには地域の人たちとともに駅に花を植えるなど、双方向での“地域密着”の取り組みを進めているという。

「我々も地域の方と一緒にお花を植えると、終わった後にお茶でもどうぞ、と(笑)。そういうところが世田谷線らしいですよね」(佐藤さん)

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