中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も
中国のEV補助金政策の波に乗り、BYD汽車等の民族系自動車メーカーはいち早くNEV市場に参入し、CATLなど多くの地場電池メーカーがEV電池の生産を開始した。
また、NIO、小鵬汽車などIT企業や異業種から参入した新興EVメーカーが増加した。電動化で自動車業界の勢力図を変えようとするBYD、巨大電池メーカーのCATLは中国EV革命を推進する代表的な破壊者として挙げられる。
従業員23万人を率いるBYDの王伝福会長はつねに「人材第一」を意識し、松下幸之助の名言「物を作る前に人を作る」によく言及した。中間管理職を定着させるために、王氏は2015年に個人保有していた17.5億元(約280億円)に相当する株式を、社内のコア人材97人に分け与えた。
2019 年1月に開催された中国電気自動車百人会フォーラムで、「ガソリン車禁止のタイムテーブルを明確にすれば、2030年に中国における全面的な電動化を実現できる」と王氏が呼びかけた。
CATLのすさまじさと今後の潜在力
2019年7月、トヨタがBYDの「33111プラットフォーム」を活用し、中国でトヨタブランドEVを生産すると発表した。
「33111」と呼ばれる5ケタの数字は、駆動モーター、コントローラー、減速機を一体化する駆動系ユニット(3部品)、直流電源モジュール、充電器、配電盤を一体化する高圧電源ユニット(3部品)、インパネやエアコンを制御するプリント基板(1枚)、車内コネクテッドシステム「DiLink」を搭載する回転可能なスクリーン(1枚)、自社製リチウムイオン電池(1個)を指し、開発の効率化を図ろうとして標準化されるユニットだ。
創業わずか7年でパナソニックを抜いて電池市場世界首位の座に着いたCATLには、国内外から一流の教育を受けた修士約1000人、博士130人が必死に日々働いている。「地場自動車メーカーで努力しても、その会社は世界一になりにくいが、CATLならできる」と筆者が取材した黄氏(28歳、ニューヨーク大学大学院修了)が熱く語った。若者の自信と熱気に圧倒されたことから、CATLのすさまじさと今後の潜在力を実感した。
CATLの曾毓群会長とは数回雑談する機会があったが、巨大電池メーカーの経営者という堅苦しさはなく、明るさと謙虚さを感じさせる人物だった。
最近、本人が「台風(EV補助金)で舞い上がる豚(技術力の低いメーカー)が本当に飛べるか」を題目とするメッセージを社員に投げかけた。中国政府の政策の恩沢に浴してきた当社のこれまでの成長を自慢することなく、これから差し迫る危機および技術力のさらなる向上を強調した。
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