日本は、北朝鮮に先制攻撃ができるのか?

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憲法解釈上は、敵基地攻撃は可能である

 では、憲法解釈上、敵基地攻撃は可能かというと、答えは「YES」です。

 1956年、国会において鳩山一郎首相名で以下のような見解が示されました。

 『わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところとは考えられない。そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ可能であるというべきである

 つまり、「ミサイルや爆撃機により我が国が攻撃を受ける場合について、相手基地を攻撃することは法律上(憲法上)可能」との政府見解が示されています。

 このように法律上(憲法上)は、敵基地攻撃はできるが、敵基地攻撃力は抑制する、というのが現在の政府の態度となります。では、政府の政策が変われば、物理的に自衛隊は敵基地攻撃ができるのでしょうか?

数年は時間がかかる

 これは当然「NO」です。現状の装備では敵基地攻撃はできないと考えられます。

 防衛庁(2003年、守屋武昌防衛庁防衛局長の国会答弁)によれば、「地対地ミサイルや爆撃機を装備するだけでは、敵基地攻撃は不可能で、全体システムとして敵地攻撃能力を装備しなければなりません。全体システムとしては、(1)敵の防空レーダー破壊能力、(2)航空機の低空進入能力、(3)空対地誘導弾または巡航ミサイル、(4) 敵基地に関する正確な情報収集能力の4つが必要であるとのことです。これらのシステムを構築するには数年は必要だと思われます。

これから議論が巻き起こる

 このまま経済制裁が発動し、経済制裁を宣戦布告とみなすとしている北朝鮮が次の活動を起こせば、今後、敵基地攻撃の議論は、活発化すると思われます。

 私は、『ミサイルによる被害を回避するため、相手国から宣戦布告があり、ミサイルの発射準備が始まった時点で、わが国は自衛権を発動し、敵基地攻撃することはありうる』と考えています。

 しかしながら、「敵基地攻撃」については、以下のような懸念が示されていることも忘れてはなりません。

1.敵基地攻撃のために日本が対地ミサイルや爆撃機など攻撃型兵器を装備すると、中国を含めた東アジア諸国で軍拡競争が起きるのではないか

2.北朝鮮のミサイルは、韓国に向けられており、日本の敵基地攻撃により韓国までリスクにさらされるのではないか


 これらの不安要素を考慮に入れた上で、我が国は合理的な判断を下す必要があります。

藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。参議院議員。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。著書に『挑戦!20代起業の必勝ルール 』(河出書房新社)など。



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