アンタッチャブル復活に人々が超感動した理由 「いやいやいや、まだ終われませんから」

拡大
縮小

3つ目の理由は、そもそもこの復活劇が視聴者に対しても何の予告もないサプライズとして進められたということだ。だからこそ、リアルタイムで番組をたまたま見ていた人にとっては衝撃が大きく、それが「事件」として記憶に残るものになった。

このサプライズ演出には、スタッフ側の熱意と誠意を感じる。山崎の登場は番組スタッフの中でも限られた人間にしか知らされていなかったのだという。情報が事前に漏れてしまうことをそれだけ警戒していたのだろう。身内すら巻き込む本物のサプライズだったのだ。

「復活劇の仕掛け人」は有田哲平

この演出に深く関わっていると思われるのが、番組のMCであり「総合演出」も兼務しているくりぃむしちゅーの有田哲平だ。有田は山崎の兄貴分的な存在として知られている。有田がこの復活劇を仕掛けた張本人なのだ。

彼らがサプライズ演出を選んだのは、そうすることであの驚きを柴田と視聴者が分かち合うことができると考えたからだろう。明らかにそのほうが見ている人にとってのインパクトは強い。同じように復活するとしても、事前にそれが告知されたり、ほのめかされたりしていたら、これほどの衝撃はなかっただろう。

もちろん、事前に告知してあおっていたほうが、目先の視聴率は上がる可能性は高い。「緊急企画!今夜あの伝説のコンビが復活!」などと報じられていれば、放送前から話題になっていたのは間違いない。ほとんどの民放バラエティー番組では、その手法を取るだろう。

でも、この番組ではそれをやらなかった。なぜなら、そのほうが面白いからだ。作り手が面白い番組を作ろうとするのは当たり前のことだが、目先の視聴率と面白さを天秤にかけて、迷いなく面白さのほうを取れる人は多くはない。

「全力!脱力タイムズ」はそもそも、全編ボケっぱなしで、見る側が心の中でツッコミをいれながら楽しむような番組だ。途中から見たときにどのように見たらいいのかわかりにくいため、そもそも構造的に数字が取りづらい。それでも笑いにこだわり、独自のスタイルを貫くことで、この番組は熱心な視聴者から信頼を得てきた。

柴田が謹慎してから、山崎は公の場でコンビ復活の可能性について語ることは、いっさいなかった。バラエティーの現場ではどんな球でも無理矢理打ち返して笑いに変えてしまう怪物が、コンビのことだけは決して多くを語ろうとしなかった。

その問題に触れないことについて、山崎自身も恐らく複雑な思いを抱えていたことだろう。底抜けに明るいキャラクターを売りにしている彼にとって、この問題を一種のタブーにするのは得策ではなかったはずだ。だが、コンビの行く末が見えていない段階でこの話題に触れても、ポジティブなことは何も言えない。だからこそ、あえて沈黙を貫いていたのではないかと思う。

次ページ「いやいやいや、まだ終われませんから」
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情
日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情
パチンコ業界で「キャッシュレス」進まぬ複雑背景
パチンコ業界で「キャッシュレス」進まぬ複雑背景
イオン、PB価格据え置きの「やせ我慢」に募る憂鬱
イオン、PB価格据え置きの「やせ我慢」に募る憂鬱
半導体需給に変調の兆し、歴史的な逼迫は終焉?
半導体需給に変調の兆し、歴史的な逼迫は終焉?
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT