「桜を見る会」問題が象徴する安倍政権の体質 「安倍一強」政権が政官界の倫理観を破壊する

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9日の記者会見でも、問題なのは「招待者の基準が曖昧」だったことであり、自分の責任で見直すとして、自らの関与や後援会のかかわり方など問題とされている点については何も触れなかった。

首相の代わりに説明役を担わされた閣僚や官僚は、事実関係を明らかにすることよりも、安倍首相を傷つけないことを重視し、場当たり的につじつまを合わせようと無理な理屈を作り上げていった。そして、この理屈が破綻すると、知らぬ存ぜぬを通すしかなくなる。こうした光景に倫理感のかけらも感じることはできない。

安倍首相が軽視する議院内閣制の根幹

同じことは安倍政権でこれまで何度も繰り返されてきた。森友・加計問題が沸騰した2017年は、財務省の局長による公文書の改ざんや虚偽答弁まで明らかになった。中央省庁の局長が首相を守るために公務員としての最低限の矜持であるべき倫理観まで放棄した。そして、これだけの重い事実が明らかになったにもかかわらず、上司である麻生太郎財務相は責任も取らないまま今も財務相を続けている。

野党が憲法の規定に基づいて臨時国会召集を要求すると、外交日程などを理由に拒否し続け、あげくに9月に臨時国会を召集すると、委員会審議などしないまま、いきなり冒頭で衆院を解散してしまった。安倍首相は自分に不都合なことを国会で追及されることがどうしてもいやなようだ。

国会は、首相がやったことが犯罪であるかどうかを調べ判断するような場ではない。それは捜査機関の仕事である。国会の果たすべき役割は、国政が公正、公平に行われているかチェックすることである。予算の編成や執行、あるいは政策などが特定の人たちの利益になるよう恣意的に作られたりしていないか、執行されていないかなどをチェックするのである。

憲法には、内閣は行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負うと書かれている。内閣の行政運営について国会が問題ありと判断すれば、最終的手段として不信任決議を行うことができる。しかし、いきなりそこまでやらなくても日常的には、国会が本会議や委員会などの場で説明を求めたり改善を要求し、首相以下内閣のメンバーがそれにきちんと対応すればよい。内閣と国会があらゆることで対立したのでは国政は滞ってしまい、経済も社会も混乱する。

つまり、首相が国会の場できちんと説明し、問題があれば謝罪するなり改善するなりしていけばいいのである。それが議院内閣制の根幹である。ところが、安倍首相は明確な根拠を示さないまま自らの正当性を主張し、あとは頬かむりして時間が過ぎるのを待つということを繰り返している。これでは政権の透明性は失われ、国民の目の届かないところで限られた人たちだけの判断で、重要な事柄が決められてしまっているのではないかという疑念がわいてくる。

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