ニューエリートが自分の資産価値を隠す理由 「7つの階級」調査でわかった「後ろめたさ」

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職業の多様性も、現代のエリート階級という星座の特徴だ。エリートといえば、銀行家や金融関連を思い浮かべる向きは多かろうが、現代の富裕なエリート階級には単一的なグループは存在しない。ビジネス、メディア、法律、アカデミズムなどさまざまな分野の人々が、社会的な地位を確たるものにするためにお互いに競争しているのだ。

エリートを星座に例えるとき、思い浮かぶのは、中心に位置するロンドンだ。さまざまなエリートたちがロンドンの周りを回り、回りながらひしめき合っている。現代のロンドンの力は過去のそれとは異次元だ。

例えば、同じ能力と資産を持ち、同じ分野でキャリアを築こうとする場合、ロンドンにいるか、イングランド北部にいるかによって、その将来は大きく異なる。

しかし、「エリート」の分類に入れるかどうかは、本人の実績の問題だ。その実績のためにこそ、ロンドンやイングランド南東部で働く意思があり、心構えができていることが非常に重要になってくると思われる。ロンドンはエリートになることにひかれた人々のエネルギーを吸い上げる渦の役割を果たしているのだ。

能力主義を尊重する

じつのところ、「普通の」エリートは必ずしも華やかで輝かしい存在ではない。富裕なエリート階級は「排他的」ではないが、仲間入りするには必死で働き「実績を上げ」なければならない。

このエリートたちは「達成」の思想に重きを置いている。しかし、出身家庭により、このエリート階級の一員になれる可能性は左右される。その意味で、特権という形を再現していることも明らかだ。

こんにちのエリートはまとまってはいない。内部は職業部門によって多様化されている。相続資産についての調査はできていないが、この階級の人たちは名家の出身者のような受け継いだ財産は少なく、自力で築いたものがかなりの部分を占めていると思われる。

多様化した「普通の」エリートは帰属に重きを置くのではなく、もっと流動的で、能力主義を重視している。この能力主義の考え方は、高い地位へアクセスしやすくするという点で、特定の大学の役割が明らかに重要であることと関連している。

「エリートであること」というのは、「高尚な」習慣や活動を単純にコピーすることによってではなく、それぞれの独創力や「知」を行動で示すことによって成し遂げられるものなのだ。「普通の」エリートであるのは、厳しいことだと言える。

マイク・サヴィジ ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス社会学部教授

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Mike Savage

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス社会学部教授と同大学国際不平等研究センター共同所長を兼任。
専門は社会階級と不平等分析。 マンチェスター大学、ヨーク大学で教鞭を執った後、2014年より現職。
著書に、Identities and Social Change in Britain since 1940: The Politics of Method, Oxford University Press,2010; Class Analysis and Social Transformation, Open University Press,2000; Culture, Class, Distinction, Routledge,2009(共著)(『文化・階級・卓越化』 磯直樹ほか訳、青弓社、2017年)ほか。

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