創造的!「空き家」巡る奇想天外ビジネスの実態 ゴミ屋敷や廃墟から限界集落の戸建てまで

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大学で建築を学び、学生時代には先輩が借りた長屋を自ら改修し、そこに友人を住まわせることで家賃を払わなくてもいい暮らしをしていた西村周治氏。現在は神戸市の不動産会社勤務の傍ら、週に3日ほどは空き家のDIYに励む。

「経済状況が変われば資産価値は変わるし、妻の実家は阪神・淡路大震災で、私の実家も大阪府北部地震で被災するなど不動産にはリスクがある。それに高額な住居費を払うためには余計に働かなくてはいけない。それが嫌で空き家の再生をしています」

自宅として使うだけでも生活が変わる

現在、手がけている住宅は昭和30年代に神戸市が分譲した平屋の最後の1棟で、価格は100万円。神戸市都心部から神戸電鉄で2駅とそれほど遠い場所ではない。神戸の山側、坂の多いエリアには200万~300万円、中にはタダでもいいという空き家があり、西村氏はそれらを買い続けている。

現在改装中の一戸建ては敷地に余裕があるため、畑も作っている。太陽光、コンポストトイレなどを導入した生活費を抑えられる住宅にする計画だという(筆者撮影)

すでに10戸を改修したほか、購入したものの手をつけられていないものが2戸、改修後に倍額で売却したものも1戸あり、家賃収入は月額80万円ほどに上る。ここ数年で、急ピッチで買い増しているため、ローン返済や、人件費、材料費を考えると収支はとんとんだという。

本業があるからできていることだが、ペースを半分に落とせば月20万円は残るようになると西村氏。また資産形成を考えず、自宅として空き家を利用するだけでも生活は変わるという。

「購入、改装で500万円。金利1%、返済期間30年なら返済は月額1万4000円。これなら収入が減っても、せっせと働かなくてもやっていける。一戸建ては難しいと思うなら、躯体をいじらずに済む団地などの集合住宅という手もあります」

生活費のうちで最も大きな割合を占める住居費を減らせれば生活は大きく変わる。オーバーにいえば人生を変えることすらできるはずで、特に若い年代にとってはその効果は大きい。空き家増には多少ながらプラスの面もあるのである。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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