独占告白「中国資本が台湾の技術を食い尽くす」 若手技術者を相次ぎヘッドハンティング
そういえば、A社の人がこう話していたことがあります。A社の仕事はゲームみたいなものだと。当時、中国は半導体産業発展のために多額の投資をしていました。加えて、地方政府の不動産投資もしていました。
そこでA社は半導体ビジネスの話で中央政府から金を引っ張り、地方政府からは土地を購入。立派な工場や研究センターを建てました。でも技術者がいない。A社の台湾での任務は、台湾の技術を中国へ持ち帰ることだったのです。
中国サイドは台湾の技術を得るために2つのアプローチ方法をとっています。1つは学術研究から、もう1つは民間企業からです。2014年ごろから、私の周囲でも多くの学生や同年代の技術者が新竹サイエンスパークから台元サイエンスパークへ移り、そこで起業しています。
ヘッドハンティング後、収入は5~10倍に
通常、会社設立は3~5人集まれば可能です。もし、若い技術者が新車に乗り換え、家を買っているのを見かけたら、大抵の場合それは中国資本にヘッドハンティングされたということです。収入は少なくとも、もとの5~10倍ほどになっているでしょう。
ヘッドハンティングされた技術者は起業後、中国資本から前の会社でやっていた作業をもう一度行うよう要求されます。そしてその成果は中国資本の手に渡ります。あるいは中国の技術者への指導もあります。
いずれの仕事にせよ、技術者にとって以前と比べてはるかに楽で、そして収入はケタ違いに増えるのです。そんな簡単に金が稼げる状況で、中国への技術流出を気にする技術者がいるでしょうか。
中国資本のやり方は厳密に言うと、台湾における営業秘密の保護を定めた営業秘密法に抵触する可能性がありますが、立証は困難でしょう。こうやって金に物を言わせたヘッドハンティングは、たった5年で中国のIC設計の研究開発能力を飛躍的に伸ばし、世界に追いつきました。
現に半導体に関する国際学会「ISSCC 2020」では、香港とマカオを含む中国の論文採択数が23件と台湾の22件を上回る結果となっています。5年前、中国の論文数はゼロでした。しかし今年になって台湾と中国の論文数は逆転したのです。これは台湾にとって重大な危機だと言えるでしょう。
(台湾『今周刊』2019年11月11日号)
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