米民主党「ウォーレン大統領」は誕生するのか バイデン、サンダース氏ら「4強」で混戦模様に

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民主党は、トランプ氏を大統領から引きずり下ろす候補を早期に選出できるのだろうか。

予備選序盤のアイオワ、ニューハンプシャー州(2月11日)では現状、ブティジェッジ氏に勢いがある。ハーバード大学とオックスフォード大学で学んだ秀才で、アフガニスタン従軍経験もある。「今年6月に彼のスピーチをアメリカで聞いたが、やはり賢さを感じさせる。討論でトランプ氏をやり込める力はありそうだ」と今村氏は話す。ただ、30代後半という若さと国政での経験のなさが格好の攻撃対象になる。

次の予備選はネバダ州(2月22日)、サウスカロライナ州(2月29日)だが、バイデン氏がここで勝てば、勢いを取り戻す可能性がある。オバマ政権の副大統領だったバイデン氏は黒人の支持が比較的厚く、南部州に強い。ペンシルベニア州出身で、中西部ラストベルト(さびた工業地帯)の票をトランプ氏から奪い返す期待もある。

トランプ氏にとって最も手ごわい相手で、世論調査では、トランプ対バイデンの場合、バイデン氏の支持率が10%ポイント前後上回っている。

ヤマ場は3月の「スーパー・チューズデー」

そして予備選最大のヤマ場が、カリフォルニア州やテキサス州など13州で両党の予備選が行われる3月3日の「スーパー・チューズデー」だ。今回は人口最大のカリフォルニア州が入るだけに、民主党の指名争いが一気に決着する可能性が高い。

バイデン、ブティジェッジ、ウォーレン、サンダースの4強の争いを中心に、出遅れのブルームバーグ氏が絶大な資金力を武器に浮上を狙う。カーマラ・ハリス上院議員(55)もカリフォルニア州地盤だけに若干チャンスを残している。

勝負のカギは、有権者の中で最大勢力となったミレニアル世代(2000年以降に成人した世代)をどう取り込んでいくか。今はサンダース氏人気が高いが、穏健派に支持を広げていけるか。支持基盤を固めているトランプ氏に対抗するうえで、若い世代の支持と投票率の底上げが焦点となる。

最終的に民主党は政権を奪還できるのか。「現状ではまだ混戦、不透明としか言いようがない。投票日の11月3日になってもわからないような状況ではないか。見方を変えれば、本来有利なはずの現職大統領がそこまで追い込まれているともいえる」と今村氏は語る。

大統領選とそれを意識したアメリカ政治の動向は日本にも大きな影響を与える。11月27日にはアメリカ議会上下両院の圧力を受けてトランプ大統領が香港人権法案に署名し、同法が成立したことで、さらなる米中対立激化の懸念が高まっている。

また、11月14日に期限切れとなった通商拡大法232条に基づく自動車への追加関税発動についても、トランプ政権は完全に取り下げたわけではなく、大統領選に向けたアピールのため、在日アメリカ軍の駐留経費負担(思いやり予算)大幅増額との対日取引材料に使われる可能性すら指摘される。今後のアメリカの行方からますます目が離せない。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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