キリンの「クラフトビール」強化は吉と出るか 高価格帯に力を入れるアサヒと真っ向勝負

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一方、アサヒグループホールディングスは「スーパードライ」など高価格帯の商品展開に経営資源を集中する。今年7月には、オーストラリアのビール最大手「カールトン&ユナイテッド」を含む事業を1.2兆円で買収することを発表した。

2016年と2017年にはヨーロッパで合計約1.2兆円を投じて、複数の企業を買収。チェコのピルスナーウルケルなど現地で評価の高い老舗ブランドを手に入れ、それらをプレミアムビールとして拡販する。同時に、現地でプレミアムビールと位置づけられるスーパードライの販売にも力を入れ、収益性を高める狙いだ。

クラフトビール事業の2020年黒字化を目指す

オーストラリアのビール市場は年間消費量が日本の3分の1と規模は小さいが、アサヒはカールトン買収でビール市場でシェア1位、市場の4割を占める商品群を手に入れた。

そのアサヒはクラフトビール市場については静観の構えを見せている。「(クラフトビールは)小規模醸造所が造る物で、大手(のビール会社)が手がける物ではない」(小路明善社長)とのスタンスをとる。

2014年に星野リゾートの子会社で国内クラフトビール大手のヤッホーブルーイングを持分会社化、2016年にアメリカ・クラフトビールのブルックリン・ブルワリーと業務資本提携し、クラフトビール育成に注力するキリンとは対照的なスタンスだ。

キリンはクラフトビール市場に注力する。写真はキリンホールディングスの磯崎功典社長(撮影:今井康一)

キリンのクラフトビール事業は現在、投資が先行し、費用がかさんでいる。現行の中期経営計画では2020年までの単年度黒字化を目指す。2020年2月には東京・日本橋にブルックリン・ブルワリーの世界初となるフラッグシップ店舗を開業する。今回買収したニュー・ベルジャンはアメリカ攻略の足掛かり的な位置づけで、キリン自身による日本市場での販売は未定だ。

キリンのビール事業の新たな柱と位置付けられているクラフトビール。高収益品に狙いを定めた戦略が奏功するには、今後のさらなる需要喚起策が求められそうだ。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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