「ブランド塾」に入って失敗する子の親の特徴 受験勉強の大事なポイントがわかっていない

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それをときどき見て、やり方を試してみる。すると、もしかしたら成績が上がるかもしれません。その番組をくだらないと思ってハナから見ない子と、「これをやったら私も成績が上がるかも」と思う子は、未来が全然ちがうのです。

大人の転職も同じです。「今より悪くなったらどうしよう」と考え、不満だらけの職場から転職できない人がいます。もし今より悪くなったら、もう一度転職すればいいのです。一度転職していると、また転職する気になったらできるはずです。0と1の差は大きいのですが、1と2、1と10の差はそれほど大きくないのです。

何かでつまずいたときに「逃げ道」を探す能力

ですから、子どもの可能性を0にしてはダメです。0と1の差は大きく、これからの時代は、0でいつづけるリスクのほうが高い。リスクをとっていないように見えて、実はリスクを子どもに押し付けていることに気づいたほうがいいでしょう。

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人には、試し続けられる人と、ビビって動けない人の、2種類があります。秀才であれば秀才であるほど、ある時期までレールに乗ってしまうため、人生観を変える勇気をなかなか持てません。ただ、あらゆることは何かしらソリューションがあるもので、ビビッてばかりいたら、結果的には余計悪いほうへ行くものです。

受験をその手始めとして、子どもにしぶとさをもっていろいろ試すことの大切さを教えたほうがいいと私は思っています。何かでつまずいたときに「逃げ道」を探したり、ほかの方法論を探したりする能力こそ、受験勉強で身に付けてほしい能力です。

つまずいたときに諦めるのでなく、別の方法を探そうという経験を、受験勉強を通じてしてほしい。根性で乗り越えるやり方は、いつかはダメになる可能性があります。運よくダメにならなくても50歳くらいになり、根性で出世してきた人がそこでつまずく、つまり体力が落ちてつまずくこともあるのです。

子どもは、よほど賢い子、世知に長けた子でないかぎり、つまずいているときにほかの道を探そうとは思いません。そこで一緒に考えてあげるのが親であり、大人の知恵なのです。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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