日本企業が知らない「会社を魅力的にする」方法 エンプロイヤーブランディングとは何か
求職者はその企業がどんな会社なのか十分承知しているだけでなく、その会社の製品を気に入っている場合もある。そしてその業界における自分の将来的な仕事がどんなものになるか想像することもさほど難しくないだろう。
一方、B2B(企業間取引)市場に属する企業、例えばモーターや化学品などの技術的な製品のメーカーは、大手消費者ブランドと比べると優秀な人材の採用が困難だ。オファーされた職が非常に興味深く、キャリアの選択肢が有望であるとしても、求職者たちがすでによく知っている有名ブランドに勤めることを希望することは少なくない。
ドイツでは政府機関なども活用
ドイツを例にとってみると、会社の所在地も大きな役割を担う。東京、大阪、名古屋といった大都市近郊に多くの企業が集まっている日本と違って、ドイツの企業所在地の分布状況は全国に広がっている。
多くのメーカーは、フランクフルトやミュンヘンのようなビジネスの一大中心地から数時間も離れた小さな都市で展開している。特定の技能を持つ従業員をわざわざ引越しをさせてドイツの中都市に居住させる、ということがドイツメーカーにとっての最大の問題なのだ。
ドイツを例に挙げれば、エンプロイヤーブランディングを利用しているのは企業だけにとどまらない。警察などの政府機関も高等教育を受けた従業員を見つけることに大変苦労しており、エンプロイヤーブランディングを非常に効果的に利用している。
上述のとおり、エンプロイヤーブランディングでは、マーケティングと人事のプロセスを用いる。最初の重要なステップは、市場における雇用者としての「自社の位置づけ」を明確にすることだ。
ここで言う位置づけとは、仕事内容(業種や日々の業務内容)から会社の福利厚生(オフィスのデザイン、無料のコーヒー、休暇、所在地など)、職場の雰囲気、ワークライフ・バランスまでに至るまで、明確にすることである。社内でのキャリア向上の機会も重要な要素だ。
これはまさに、その企業やそこで働く人々、そしてその企業が世の中でどんな役割を果たしているかについてのストーリーそのものである。総体的な目標は、その企業を単なる職場としてだけではなく、充足感のある居心地のいい場所として提示することだ。消費者がものを購入する時と同様に、求職者は雇用主を選ぶ際に自分の感情を伴った決断をするものであり、この事実は企業が対策を考慮するべき点である。
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