「営業万能」と語る34歳ベンチャー社長の行動術 空き駐車場予約アプリ「akippa」社長に聞いた

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「最初は家に電話回線を引いて、一人でテレアポするところから始めました。しばらくして、飲み会で知り合った24~25歳のギャル2人をバイトで雇いました(笑)。彼女たちはシングルマザーで、一生懸命働いてくれて、とてもありがたかったです。1年後には社員4人、バイト5人の計9人の会社になっていました」

テレアポして、とにかく契約数を取っていく。一般的には「つらい」と思われがちな仕事だが、ガッツのあるメンバーのおかげで業績は右肩上がりに。しかしある時、金谷さんは重大なことに気付いた。

“契約数を上げてナンボ”な労働集約型のビジネスなので、社員が休んだり、連休の多い月は契約件数が下がるんですよね。このままではいけないと危機感を覚えました」

そこで成果報酬型の求人サイトを新たに立ち上げることに。ところがここでも壁にぶち当たる。後から利益が得られるビジネスモデルゆえに、短期的な売上が得られなかったのだ。結局、資金は底を尽き、当時30人の社員を抱えて、銀行の残高が1万円という状況に。役員には数カ月も給料が支払えないという絶体絶命のピンチに陥った。

営業力さえあれば、どんなピンチも乗り越えられる

社員数30人で、口座が残り1万円。そんな会社設立以来のピンチを救ったのは、金谷さんの営業力だった。

「資金難になると、銀行は資金を融資してくれませんでした。途方に暮れて本屋で『資金繰りに困った時に読む』みたいな本を手に取ったら、『資金はベンチャーキャピタルから調達する』という項目があって。その後すぐに『ベンチャーキャピタル 日本』でWeb検索して、片っ端から電話をかけていきました。その結果、ベンチャーキャピタル最大手のJAFCOが6500万円融資してくれることになり、難を逃れたんです」

まさに新規開拓営業で培った「大量の顧客接点を生み出す手法」が生きたわけだが、どんな相手にもひるむことなく顧客接点を創り出していける勇気と推進力は、その後何度も金谷さんを助けてくれたという。

求人サイトへの挑戦で資金難になった失敗を生かし、融資を得てからは「日本の困りごとを解決する企業になろう」と企業理念を制定。社員と会議を重ね、空いている駐車場をシェアするアプリ『akippa』のサービスを構想した。

「事業を思い付いたはいいけど、当時はシェアリングエコノミーって言葉も知らなかったし、もちろんWebアプリを作った経験もありません。僕が出来るのは営業だけだったので、コワーキングスペースに行って作業中のエンジニアに次々と声を掛けて、プロダクトを作ってもらえるよう頼み込んだんです」

『akippa』は空き駐車場を貸してくれるオーナーと、駐車場を利用したいユーザーをつなぐサービス。協力してくれるオーナーを探すため、金谷さんは自ら自転車に乗って営業を行い、契約駐車場をどんどん増やしていったという。

「この時学んだのは、営業力さえあれば、自分より優秀なプロフェッショナルたちが力を貸してくれるようになるということ。もともと僕はバイトすらできないような人間ですから、営業して誰かに助けてもらうしかありません。自分一人でできないことをできるようになろうと苦労するより、よほど近道だなと思いました」

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