復旧を阻む険しさ、箱根登山鉄道の「台風被害」 橋桁が流出、今後の被災防ぐ対策も課題

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この大平台隧道、大沢橋梁周辺の被害に関しては、「行政サイドの許可が下り、これから岩石の除去作業に入る」(土木担当者)状況だという。

台風前(上)と台風後(下)の蛇骨陸橋付近の様子(写真:箱根登山鉄道)

より大きな被害が発生したのが、小涌谷駅の手前に架かる蛇骨陸橋だ。新聞、テレビなどで折れ曲がったレールが土砂に押し流された様子が報じられたのをご覧になった方も多いだろう。

「蛇骨陸橋は、3つの橋脚の上に4つの橋桁が載った構造になっている。このうち、強羅方の橋脚1脚と、この橋脚に支えられていた橋桁2連が、線路脇の崖の斜面崩壊により発生した大量の土砂に巻き込まれて流出した。これにより陸橋上の約40mを含む、全体で約80mのレールも、枕木もろとも流出した」(土木担当者)

蛇骨陸橋の構造と被害の状況(筆者作図を基に編集部加工)

そして、蛇骨陸橋と小涌谷駅の間に位置する小涌谷踏切付近の線路は、国道1号から大量の雨水が流れ込み、線路下の道床が洗掘され(えぐり取られ)、レールが半ば宙に浮いた状態になっている。

道床がえぐり取られた小涌谷踏切付近の線路(写真:箱根登山鉄道)

最も被害を受けた場所では深さ約3mの洗掘が確認されている。「この場所は1991(平成3)年の台風で、今回と同じように路盤が流出し、レールが宙に浮く被害が発生した場所。当時の復旧作業で行った線路脇の法面部分のコンクリート補強のおかげで、今回は全体的な崩壊は免れた」(土木担当者)という。

復旧を阻む難題とは

今回、最も大きな被害が発生した蛇骨陸橋の復旧に関しては、いくつかの難しい問題があるという。

1つは、崖崩れが発生した斜面の一部に、台風時に崩落を免れた部分があり、これがいつ崩落するかわからない状態であることだ。「2次災害が発生するようなことがあってはならない。まずは斜面の状態の調査と補強・防護を行い、安全を確保したうえで、陸橋の復旧作業に入る予定だ」(土木担当者)という。

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