乱気流の日本株、脆弱なのは先進国も同じ 揺れ動く、投資家の心理
[東京 21日 ロイター] -マーケットは経済指標に一喜一憂する不安定な展開だ。前日は米中の経済指標悪化が嫌気されたが、本日は米国で寒波の影響を感じさせないデータが出て株価は急反発。
「フラジャイル」と呼ばれるぜい弱な新興国の経済悪化が懸念されているが、先進国も超金融緩和で支えられたもろさをはらむ。世界経済が回復へのナローパスを歩むなかで、投資家心理は揺れやすくなっている。
乱気流の中の日本株
日本株は乱気流の中にあるようだ。前日、日経平均<.N225>は317円下落したが、21日は急反発し、上げ幅は400円を超え1万4800円台後半を回復した。ただ、市場のセンチメントが急速に回復したとするには、東証1部売買代金が2兆円を割り込み盛り上がりは乏しい。「ボラタイルな相場に長期投資家は様子見。海外短期筋の売買だけで値が上下に振れている」(国内証券)という。
マーケットのセンチメントが定まらないのは、投資判断の基準となるファンダメンタルズを示す経済指標がまちまちなためだ。
前日は米国の住宅指標や中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が悪かったことが嫌気されたが、21日の市場では、2月米製造業PMIが2010年5月以来の高水準となり、安心感をもたらした。
米経済には現在3つの不透明要素がある。1)寒波、2)在庫投資、3)テーパリング(量的緩和縮小)だ。寒波は予想外に長引き米国の幅広い地域に影響をもたらしている。米企業は昨年、在庫投資を増やして米経済を押し上げたが、今年に入りどの程度、投資増額分を減らすかは寒波の影響がどの程度出るかにかかっている。
三菱東京UFJ銀行・シニアマーケットエコノミストの鈴木敏之氏は「QE3(量的緩和第3弾)は、市場の一般的な認識以上にアニマル・スピリッツへの刺激などで米経済を押し上げていた可能性がある。テーパリングによる影響はまだ読めない。寒波も、その間に職がなければ、その分収入は減る。一時的な影響とはかたずけられない」との見方を示す。
超金融緩和で支える先進国経済
一部の新興国は「フラジャイル」と呼ばれ、ぜい弱な経済が懸念されているが、足元の弱さでは日米欧の先進国も似たようなものだ。日米では政策金利がゼロになり、中央銀行は金利を操作する金融政策を使えなくなり、国債などを大量に購入する非伝統的な緩和政策を実施して経済を支えている。
裏を返せば、それほどの金融緩和を続けていかなければ、まだ経済は自律回復できないということを示す。欧州中銀(ECB)は長期資金供給オペ(LTRO)を吸収し始めているが、ディスインフレ懸念が強くなっており、市場では利下げの可能性を見込み始めている。
リーマン・ショックの世界金融危機から5年半。ようやく立ち直ってきた世界経済だが、前代未聞の超金融緩和をショックなしに収束させるのは容易ではない。金利が上昇してしまえば、経済回復に伴う良い金利上昇であっても、巨額な政府債務を抱える先進国には大きなダメージとなる。世界経済が回復に向けて進む道は、依然としてナローパス(狭い道)だ。
市場では、日本はさらに追加緩和に踏み込むとの見方も出ている。4月から実施される消費増税が経済の腰を折ってしまいかねないリスクがあるためだ。金融政策の正常化に向かう「出口」はまったく見えない。
米国は一歩先んじて、超金融緩和の状況から抜け出そうとしているが、わずかに資金供給量を減らしただけで、新興国市場は揺らぎ、先進国のマーケットもそれによって大きな影響を受けた。かといって、いつまでも超緩和を続けていては、「バブル」を発生させてしまう。
「バブルを起こさずに、しかも、経済を失速させずに、利上げ、もしくはその観測を市場にうまく浸透させることができるか。イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の手腕が問われる1年になりそうだ」とニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏は話している。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら